「霧のアーティスト」として知られている中谷芙二子とダムタイプの中心的メンバー・高谷史郎による協同展覧会「霧の街のクロノトープ」が、12月5日より京都駅東南部に位置する東九条の北河原団地跡地で開催される。
1970年、日本万国博覧会のペプシ館で初めての人工霧による「霧の彫刻」プロジェクトを発表した中谷。これまで純粋な水霧を用いた環境彫刻、インスタレーション、パフォーマンスなど、人と自然を取り結ぶメディアとしての霧作品群をスペイン・ビルバオのグッゲンハイム美術館、パリの共和国広場、ロンドンのテート・モダンなど世界各地で展開してきた。70年代から社会を鋭く見つめるビデオ作品の制作や、海外作家との交流を推進するとともに、日本の若手ビデオ作家の発掘と支援に尽力している。
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いっぽう、京都市立芸術大学在学中の84年からアーティスト・グループ「ダムタイプ」の活動に参加した高谷は、様々なメディアを用いたパフォーマンスやインスタレーション作品の制作に携わり、世界各地の劇場や美術館、アートセンターなどで公演・展示を行ってきた。
マルセイユ・フェスティヴァルでの公演や、山口情報芸術センター[YCAM]、ドイツのカールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター、パリ科学産業会館などでの作品展示のほか、坂本龍一、野村萬斎、樂吉左衞門らとのコラボレーション作品も多数展開している。
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「人類の進歩と調和」が謳われた1970年から半世紀を経た現在、これまでの枠組みで応じることができない分岐点を問う、ということから発想された今回のプロジェクト。戦前・戦後期の混乱や差別、バブル期の都市開発により大きな変容を受けながらも、違いを認め合い多文化共生の文化を育んできた北河原団地跡地で、“純粋な水”による「霧の彫刻」を展示することにより、人と人、人と自然の信頼関係への新たな視座を探求するという。
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