東京・虎ノ門の大倉集古館で、オーストリア、ウィーン近郊のロースドルフ城の陶磁器コレクションを紹介する展覧会が行われる。
ロースドルフ城には、日本の古伊万里を中心とした陶磁器が多数所蔵されており、それらはかつて調度品として城内を美しく飾っていた。しかし、第二次世界大戦末期に数ヶ月間ソビエト軍に接収され、その撤収の際にほとんどの陶磁器が破壊されてしまった。
城主であるピアッティ家は、破壊された陶片を捨てずに集め、城の一室にインスタレーションをつくり、平和への祈りを込めて一般公開している。本展は、国内にある有田磁器の名品とともに、陶片を含むロースドルフ城の日本、中国、西洋の陶磁器コレクションを初公開するものだ。
会場は2部構成。第1部「日本磁器誕生の地『有田』」では、ロースドルフ城のコレクションの大半を占める日本の有田磁器の流れを、佐賀県立九州陶磁文化館の所蔵品を中心に展観する。
江戸時代初期に現在の佐賀・有田で始まり広がっていった経緯から、最高技術を結集した鍋島藩窯様式の作品までの流れを概観。さらには、江戸時代と幕末明治の輸出磁器の様相についても知ることができる。
第2部「海を渡った古伊万里の悲劇『ウィーン、ロースドルフ城』」では、ロースドルフ城のコレクションを紹介。1820年代後半にこの城に居を構えたイタリア・ヴェネツィア出身のピアッティ家は芸術に造詣が深く、東洋・西洋の磁器が、調度品として数多く城内に飾られていた。
同展では、第二次世界大戦により破片となってしまったものを含め、日本の古伊万里や明治有田、中国・景徳鎮窯、ドイツ・マイセン窯、オーストリア・ウィーン窯など様々な産地のコレクションを展示。また、城のミュージアム内部の様子も一部再現される予定だ。
また、本展にあわせて実施した修復によって甦った品々から往事を偲ぶとともに、陶磁器の修復工程や技術について紹介する。修復によって改めて姿を現す美しき魂の再生に触れることができる機会となっている。
海を渡って苦難の道を歩んだ古伊万里が里帰りし、平和への象徴として復活する様を目の当たりにする場ともなる同展。波乱に満ちたロースドルフ城コレクションの全貌が明らかになる。