画壇の寵児として将来を期待されながら、1985年に38歳という若さで世を去った画家、有元利夫。没後35年となる今年、有元の大規模な回顧展が東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催される。会期は2020年6月25日〜8月30日(※新型コロナウイルス感染症拡大の影響により5月19日に開催中止が発表)。
有元は1946年岡山県出身、東京・谷中で育つ。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業後、デザイナーとして電通に勤務するも、3年後に退社し画家の道を歩む。学生時代に旅したイタリアでフレスコ画の魅力に触れた有元は、そこに日本の仏画との共通の美を見出し、岩絵具や箔を駆使した独自の技法を追求する。
西洋と東洋の技法を組み合わせながら、花や音楽、手品、花火、アルルカンなどのモチーフを多様し、幻想的な世界観を生み出した有元。あえてキャンバスに剝落をつくったり、額縁に虫食いの穴を空けるなど、風化の様相を作品に組み込むのも特徴となっている。
同展では絵画以外にも、版画や素描のほか、 陶器や乾漆などの立体作品も紹介。さらにデザイナーとして電通に勤務していた時代のデザインワークなどもあわせて展示する。夭折の画家を豊富な作品で回顧しながら、その想像力や世界観を改めて世に問う展覧会となっている。