NEWS / EXHIBITION - 2020.4.20

ヨーロッパを代表するアーティスト。社会的タブーを打ち破るアデル・アブデスメッドの作品に学ぶ

人間の根源的な苦しみや悲哀を、現代的な素材を用いて表現するアデル・アブデスメッド。現在、その個展「アデル・アブデスメッド : Play it Again」が、代官山のアートフロントギャラリーで開催中だ。ヴェネチア・ビエンナーレ代表として4回選出された経験を持つアデルの軌跡をたどりたい。会期は5月10日まで(*1)。

アデル・アブデスメッド ゴーストダンス 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナー2018での展示風景 Photo by Keizo Kioku

 現在、ヨーロッパを拠点に活動を行うフランスのアーティスト、アデル・アブデスメッド。現在、その個展「アデル・アブデスメッド : Play it Again」が、代官山のアートフロントギャラリーで開催されている。会期は5月10日まで(*1)。

 アデルは1971年にアルジェリアに生まれ、リヨンのボザールで学んでいる頃からビデオ作品の発表を開始。多様なメディアを用いながら、日常に潜む暴力や戦争の悲惨さなどを表現するその作品は、私たちが生きる現代社会に鋭いメスを入れる。

 アデルはこれまでヴェネチア・ビエンナーレの代表として4回選出。2007年の参加時には、ネオンと有刺鉄線を使ったミニマルなふたつの作品でベネッセ賞を受賞した。そのほか日本では横浜トリエンナーレ(2001)や、あいちトリエンナーレ(2010)に参加し、奥能登国際芸術祭(2017)では主要作家として招聘された。また20年開催予定のいちはらアート× ミックス(*2)でも、小湊鉄道五井駅の歩道橋の下にピアノを吊り下げ、自動演奏によって、人間不在でありながら同駅を出発する芸術祭の来訪者を音楽で送り出す作品を企画中だという。

 主に人間の根源的な苦しみや悲哀を、現代的な素材を用いて表現するアデルの作品。過激な戦争の悲惨さを直接的に社会に訴えた《Cri》(2012)では、ベトナム戦争の最中、アメリカ軍の空爆を逃れるために全裸で走り来る女の子の写真をもとに、その瞬間を象牙で凍結させて見せた。同作は、アルジェリア独立戦争による情勢不安のなかで故郷に帰れなくなり、たったひとりで作品制作を続けることで世の中と闘うことを余儀なくされたアデル自身の経験と重なるようだ。

 ビデオ作品では頻繁に動物が登場。アラブの春を連想させる鶏が焼かれる作品《Printemps》(2013)は、動物愛護団体などから様々な批判を受けたが、展示会場では三方の壁がその映像で埋め尽くされ、見る者がその場から逃避できない、逃げずに現状を直視するしかない、というきわめて強いメッセージを発信した。

 宗教的/性的/政治的タブーを打ち破り、社会問題や困難な状況に立ち向かってきたアデル。その軌跡をたどる本展に注目が集まっている。

*1──緊急事態宣言に伴って、現在営業を一時休業中。一部作品はウインドウ越しに観覧可。同ギャラリーは、近日中に公式ホームページにて本展の詳細な解説をアップする予定。作品のビューイングについては平日のアポイントのみ受け付けている。一部作品をAFT Art hunting内にて掲載。
*2──いちはらアート× ミックスも来年3月20日まで開催の延期が決定した。