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アデル・アブデスメッド「Play it Again」

アデル・アブデスメッド ゴーストダンス 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナー2018での展示風景 Photo by Keizo Kioku

 アデル・アブデスメッドは現在、欧州を活動拠点としているフランスの重要なアーティストのひとり。1971年アルジェリアに生まれ、リヨンのボザールで学んだ頃からビデオ作品を発表し始め、日常に潜む暴力や戦争の悲惨さといった現代に鋭いメスを入れる作品を多様なメディアで制作している。これまでヴェネチア・ビエンナーレに4度出展し、2007年にはネオンと有刺鉄線を使ったミニマルな2つの作品でベネッセ賞を受賞した。

 日本では横浜トリエンナーレ(2001)、あいちトリエンナーレ(2010)に参加。奥能登国際芸術祭(2017)では、主要作家として招聘され、翌年の越後妻有アートトリエンナーレでは、廃屋の屋根を光の束が貫通している作品を発表。この光の束は作家が少数民族ラオ族の楽器(竹の笙のような形状の)からインスパイアされたかたちであり、実際に周囲の竹林と連動して尺八を使った音が流れるインスタレーション《ゴーストダンス》として注目された。

 アデルの作品は、人間の根源的な苦しみや哀しみを現代的な素材を使って表現したものが多い。過激な戦争の悲惨さを直接的に社会に訴えた作品は《Cri(叫び)》(2012)では、ベトナム戦争の最中にアメリカ軍の空爆を逃れるために全裸で走り来る女の子の写真をもとに、その瞬間を象牙で凍結させた。またビデオ作品では、頻繁に動物が登場し、アラブの春を連想させる鶏が焼かれる《Printemps(春)》(2013)では、三方の壁が映像で埋め尽くされ、「逃げずに現状を直視するしかない」という極めて強いメッセージを発信した。

 本展では、宗教的、性的、政治的なタブーを打ち破り、社会問題や困難な状況に素手で立ち向かうアブデスメッドの軌跡を、作品やコンセプトのマケットで紹介する。