奈良国立博物館で、正倉院宝物の精巧な再現模造の数々を一堂に公開する特別展「よみがえる正倉院宝物─再現模造にみる天平の技─」が開催される。会期は4月18日~6月14日(※会期変更:7月4日〜9月6日)。
正倉院宝物とは、奈良・東大寺の正倉院正倉に伝えられた約9000件におよぶ品々を指す。1972年から宝物を管理する宮内庁正倉院事務所によって材料や技法、忠実な再現に重点を置いた模造製作が行われるようになり、以来優れた作品が数多く生み出されてきた。
本展では、そんな再現模造品のなかから選りすぐりの約100点を紹介。再現模造の展覧会としてはおよそ20年ぶりとなる。人間国宝ら伝統技術保持者の熟練の技と、CTスキャンなど最新の科学技術を融合させて再現した天平美の芸術的深みや品格が最大の見どころだ。
第1章には、華麗な装飾だけでなく、実際に演奏が可能な楽器として再現することを重視し、8年がかりで完成した《模造 螺鈿紫檀五絃琵琶》をはじめ、《模造 酔胡王面》などの鮮やかな色彩の楽器類が並ぶ。第2章では、年中行事に関わる儀式具や、東大寺ゆかりの仏具や箱・几(き)を紹介。原宝物ではすでに失われた装飾や不明瞭となっている文様が、模造で鮮やかに蘇る。
また、第3章では『国宝珍宝帳』の筆頭に記載されている、聖武天皇も愛した《七条織成樹皮色袈裟》ほか袈裟に関わる一連の由緒ある品の模造を、第4章では、その技術の高さにおいて宝物を代表する鏡・調度品・装身具を紹介する。
そして第5章では、聖武天皇が儀仗に用いた大刀と考えられている《模造 金銀鈿荘唐大刀》や、その他実用本位の刀や武器・武具の機能美を展示。第6章では、多色コロタイプ印刷による精緻な模造で、奈良時代の文書行政を物語る660巻あまりの正倉院文書の全体像に迫る。
なお本展は、2022年春までに長野の松本市美術館、名古屋の松坂屋美術館、沖縄県立博物館・美術館、福岡の九州国立博物館、新潟県立近代美術館、北海道立近代美術館、そして東京のサントリー美術館に巡回予定となっている。