ブラジルのサンパウロを拠点に活動を行うパロマ・ボスケの個展「ダークマター」が、東京・原宿のBLUM&POEで開催される。会期は2020年1月25日~2月29日。
テクスチャーや重さに注目し、真鍮からフェルト、ブロンズ、炭、ガムロジン(天然ゴム)、ビーズワックス、なめし革、クラフト紙、コーヒーフィルター、ウールまで、多種多様な素材を用いるボスケ。典型的な彫刻から脱しているその作品は、様々なフォーマットやスケールのコンポジションによって、きわめて繊細な世界を生み出す。
2017年には、リスボン博物館で個展「O Oco e a Emenda」を開催。加えて、「Brasile. Il Coltello Nella Carne」(Pac-現代美術館、ミラノ、2018)やコインブラ・ビエンナーレ(ポルトガル、2017)、「United States of Latin America」(デトロイト現代美術館、2015)など、美術館のグループ展にも精力的に参加してきた。
本展のタイトルである「ダークマター(暗黒物質)」とは、素粒子によって構成されたほぼ相互作用を行わない物質だ。光を放つこともなく、検出はきわめて難しいと考えられているが、20世紀前半から仮説的に議論され、近年になって実験的にその存在が示唆されるようになった。宇宙論におけるΛ-CDMモデルによれば、これらの粒子は宇宙の27パーセントを構成していると計算されているものの、それらを証明できる理論はほぼ存在しないという。
かねてよりボスケは、引力、反発力、波動といった絶え間ない循環のなかで存在する数多くの原子が持つ、容易には知覚できない要素の相互的な関係性が世界の見え方をいかに決定するか考察を深めてきた。本展では、この関心から出発した平面や立体作品を含む新作群を発表する。
「Plate」と題された平面のシリーズは、併置された物質同士からイメージが浮かび上がるような印象を与えるもの。そのコンポジションは、メッキ加工された鉄網、粘着性を持った綿の繊維素材を組み合わせた構造体をつくるプロセスから始まっていく。
漆黒のコットンの繊維状の素材から成るチューブ状の形態を持つ作品《Sea Tube》では、貝殻のなかで反響する海の音を再現することで、物質性とその形態の組み合わせから生じる事物の内側で生まれる音の効果を参照。ボスケは、この内側に存在する空虚な空間に、異なる場所や時間を結びつけるチャンネルとしての潜在性を見出している。
また、《Black Sun》という作品は、鉄のスタンドの上を覆うようにぶら下がり、編み込まれたトウモロコシのひげのような金属糸と、その上を漂うようないびつな黒い円形の構造体から構成される。これとは対照的に、《black hole》と名付けられた作品は、金属糸が、床上の円形の構造体が持つ重力に吸い寄せられるかのように、上から下へ垂れ下がっている。ボスケは、自身の手によって最終形態へと転化させていく素材と自身の間で生まれる相互的なやりとりを探求し続ける。