物質の形態変化や人間の知覚を題材としたプロジェクトを手がけるアーティスト何翔宇(へ・シャンユ)。その監督作品『ザ・スイム』(2017)が、11月30日より、東京・渋谷のシアター イメージフォーラムで上映される。本作は、ニューヨークのグッゲンハイム美術館でのプレミア公開と、東京都写真美術館「恵比寿映像祭」でインスタレーション展示を経て、今回が世界初の映画館での公開となる。
何翔宇の故郷は、中国・遼寧省の丹東市。その対岸は北朝鮮であり、鴨緑江という国境に流れる川を泳いで国を渡る脱北者がいたという。何翔宇は、脱北者とは逆のルートを選択し、北朝鮮を目指して故郷から川を泳ぐパフォーマンスを実行。本作はその記録映像だ。
劇中には、中国で息を潜めて暮らす北朝鮮の男兄弟や、内気な息子のために脱北女子を嫁に迎えるも逃げられてしまった中国人家族、川の向こうで餓えに苦しむ北朝鮮の少女を中国側に連れてきて世話をした中国の退役軍人といった、地元民へのインタビューも映し出される。雄大な中国の光景とともに様々な人間関係をとらえた故郷のポートレイトを、映画館のスクリーンで楽しみたい。