大正末期から昭和初期にかけて隆盛した「芸術写真」の第一人者、塩谷定好(1899~1988)。その生誕120年を記念し、初期から1970年代までの作品を一堂に紹介する回顧展「生誕120年 芸術写真の神様 塩谷定好とその時代」が、鳥取県立博物館で開催されている。会期は12月15日まで。
生涯を通じて鳥取の赤碕(あかさき)を拠点に制作を続けた塩谷。同じく山陰を舞台に活動した写真家・植田正治は塩谷を「まるで神様のような存在」と形容し、その撮影姿勢に対して受けた衝撃と作品への敬意を表している。
塩谷の名を一躍世に広めることとなったのは、『カメラ』や『アサヒカメラ』といった写真雑誌の全国コンクールで入選を重ねた、山陰の風景や人物を独特のソフトフォーカスでとらえた作品群。戦争による空白期間を経て活動を再開し、その後は地元のカメラクラブを中心として旺盛に活動。終生にわたって作品をつくり続けた。
本展の第1部では、塩谷の初期から晩年までの作品の全容を、スケッチなどの資料とあわせて紹介。同館が所蔵する塩谷作品全100点を一挙に公開する初の機会となる。
また第2部では、芸術写真のムーヴメントを牽引してきた代表的な作家や、塩谷と交流のあった日本光画協会の会員、カメラ雑誌『芸術写真研究』や地元のカメラクラブで同時代に活動したアマチュア写真家たちの作品もあわせて展観。人々を魅了した芸術写真の時代とその精神を検証する。
近年再評価の動きが高まる「芸術写真の神様」塩谷定好の全貌に迫る貴重な機会を、逃さずチェックしてほしい。