内部が⼀⽅通⾏で、上りと下りが合流しない回廊構造の日本建築「さざえ堂」。さざえ堂の三層構造の空間には、100ヶ所の観⾳霊場を巡礼する平安時代の「百観⾳巡礼」にならい、計100体の観⾳像が安置されている。これによって簡略化した「百観⾳巡礼」を実現し、参拝者は、さざえのような螺旋状の空間を歩きながら観⾳像に祈願することができる。
群⾺県太⽥市には、1798年に建⽴された「曹源寺さざえ堂」と、2017年春に開館した「太⽥市美術館・図書館」の二つの螺旋状の建造物が存在する。今回、曹源寺さざえ堂が国の重要⽂化財に指定されたことを機に、「現代のさざえ堂」ともいえる太⽥市美術館・図書館で、展覧会「2020年のさざえ堂―現代の螺旋と100枚の絵」が開催される。会期は2020年2⽉6⽇〜5⽉10⽇。
本展の参加作家は、⼀般的な油絵の概念を超えた厚塗りの絵画で知られる画家の高橋大輔、作曲の⼿法を様々なメディアに応⽤する音楽家でありアーティストの蓮沼執太、多様なモチーフや素材、ときにコラージュを施した作品を発表する⽇本画家の三瀬夏之介、プライベートとパブリックの境界にゆらぎを与えるアーティスト・持⽥敦⼦の4名だ。
蓮沼、三瀬、持⽥の3名は、「さざえ堂」と「螺旋」をテーマに作品を展⽰。高橋は「百観⾳巡礼」にならい、計100枚の絵を3つのフロアに展⽰することで、さざえ堂の構造と意義に対して新たな可能性を投げかけるという。
下部から上部へ、そしてまた下部へと展開される螺旋空間での⾝体性を伴う鑑賞体験は、どのような知覚の獲得につながるだろうか。