マリア・ファーラのアジア初個展「Too late to turn back now」が、東京・六本木のオオタファインアーツで開催されている。会期は9月21日まで。
ファーラは1988年フィリピン生まれのペインター。イギリス人の父とフィリピン人の母を持つ。幼少期を山口県下関市で過ごしたのち、15歳の時にロンドンに移住。現在もロンドンを拠点に活動を行っている。
通りのパン屋を覗く女性や窓越しの庭、鏡台に散らばる化粧品など、日常でふと目にした場面や記憶の断片から新たな情景を構築して描くファーラ。切り取る瞬間はどれも具体的でありながら、とらえどころのない浮遊感を漂わせて描かれる。
本展で発表される新作は、画面を絵具で埋めることで支持体であるリネンの存在感を消し、これまでの儚げな絵画世界から、重厚に重ねられた原色が支配する濃密な表現へと変化を見せている。
新たなアプローチで展開される本展は、「振り返るにはもう遅い」を意味する展覧会タイトル通り、振り返ることなく新たな世界に飛び込もうというファーラの決意表明ともいえる。