広島の原爆投下を描いた山口勇子による絵本『おこりじぞう』の挿絵で知られる画家・詩人の四國五郎(1924~2014)。亡くなった後も各地で企画展が開催されるなど、近年再評価が進む四國の人生や作品を紹介する展覧会が、大阪大学総合学術博物館で開催中だ。
四國は広島県に生まれ、1944年に20歳で徴兵。弟を原爆で失い、終戦後にはソ連・シベリアでの強制労働である「シベリア抑留」を経験する。48年故郷に帰還した後は、詩人・峠三吉らとともに反戦文化運動に参加。峠による『原爆詩集』やサークル誌『われらの詩』、街頭に展示される「辻詩」の挿絵などを描き続けた。
反戦平和を主題とした作品を描くいっぽう、74年に広島で「市民が描いた原爆の絵」を集める運動が始まった際には市民に自らの被爆体験を描く方法を示唆する役割を果たし、その高揚を支えた四國。また最近では、シベリア抑留体験に基づく『わが青春の記録』が復刻され、後年の作品も注目を集めている。
本展は、関西初となる四國の展覧会。時系列を追った「シベリア抑留体験と表現」「被爆地ヒロシマの反戦文化運動」「反戦平和のために」「被爆体験を描く/ひろしまを描く」の4章で、絵画作品から「辻詩」、『おこりじぞう』の原画までを見ることができる。
なお会期中の6月21日~27日(24日休館)には、豊中市立文化芸術センター 特別展示室で「『絵本おこりじぞう』原画展ー詩画人四國五郎からのメッセージ」が同時開催される。