2019.5.29

絵と世界と自分との距離を測り直す試み。坂本夏子が3年ぶりとなる個展を開催

アーティスト・坂本夏子の3年ぶりの個展「迷いの尺度―シグナルたちの星屑に輪郭をさがして」が、東京・天王洲のANOMARYで開催される。会期は6月8日~7月6日。

坂本夏子 Signals, mapping 2019 © Natsuko Sakamoto

 坂本夏子は1983年熊本県生まれのアーティスト。2012年に愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士後期課程を修了した。在学中に絹谷幸二奨励賞(2009)とVOCE奨励賞(2010)を受賞するなど、高い評価を受けてきた坂本。13年には岡山での3ヶ月の滞在制作を経て、大原美術館での個展「ARKO 2013 坂本夏子」で大作を発表し、話題を集めた。

 そのほか「絵画の庭ーゼロ年代日本の地平から」(2010、国立国際美術館)、「魔術/美術ー幻術の技術と内なる異界」(2012、愛知県美術館)、「であ、しゅとぅるむ」(2013、名古屋市民ギャラリー矢田)といいた数多くのグループ展にも参加するなど、精力的に活動を行っている。

 一度描いたところには戻らず、タイルなどの単位をつなぎながら描いていく手法によって歪んだ空間を生み出したり、また自身の分身のような女性像を登場させることで、見るものを絵画に入り込ませる坂本の作品。2012年以降は、絵画に宿る物語性やイメージのビジョンに頼らず、描く行為を前景化した表現なども展開させてきた。

 そんな坂本の3年ぶりとなる個展「迷いの尺度ーシグナルたちの星屑に輪郭をさがして」が、東京・天王洲のANOMALYで開催される。

 最新作のトリプティック《Signals》は、チカチカと明滅するような、独特の質感とリズムを湛えた絵の具の点とグリッドが集積し、複数のシナプスのようなかたちを形成しながら、広がる宇宙空間あるいはネット空間を思わせる無限に広がる背景に、それぞれのロジックによって線が巡らされている。

 本作の制作過程において、好んで用いているキャンバスのサイズが、自身が片手を上方に目一杯伸ばした際の身長とちょうど同じ高さであることに気が付いた坂本は、自身のスケールを「尺度」として、絵と世界と自分との距離を測り直すことを試みる。本展では120号の大作のほか、約90点におよぶドローイングや立体作品を見ることができる。