ヤン・ヴォーの個展「To each his due」が開催中。歴史と交差する作家自身の伝記、そしてイメージの数々とは

現在はベルリンとメキシコシティを拠点とし、写真や資料を組み合わせたインスタレーションで、アイデンティティの問題などを扱ってきたベトナム出身の作家、ヤン・ヴォー。その個展「To each his due」が、東京・東麻布のTake Ninagawaで開催されている。会期は5月18日まで。

Photograph of Danh Vo's nephew Gustav by Heinz Peter Knes ©Danh Vo

 ヤン・ヴォーは1975年ベトナム生まれ。4歳のときサイゴン陥落から逃れるため、家族とともにボートで国を脱出。デンマークの貨物船に救助され、一家はその後コペンハーゲンに定住する。そしてヴォーは同地とドイツ・フランクフルトの大学で美術を学び、現在はベルリンとメキシコシティを拠点に活動を行っている。

 こうした自らの来歴と、世界各地に眠る記憶を接続し、アイデンティティやセクシャリティといった問題を扱ってきたヴォー。代表作として、約30トンの1セント銅貨で等身大の「自由の女神像」を制作し、それぞれのパーツを世界中に設置するプロジェクト《We the People》などが知られている。昨年には、ニューヨーク・グッゲンハイム美術館で大規模な個展「Danh Vo: Take My Breath Away」を開催した。

 ヴォーは今回の個展で、今年の第58回ヴェネチア・ビエンナーレに出展予定のものと同じシリーズの作品を展示。ヴォーは制作にあたり、自らの恋人や親戚、かつての教師などとコラボレーションを行った。複数のオブジェクトはヴォーの家族や友人に直接的・比喩的に関わり、そのなかで作家自身の個人史と歴史が交差していく。

 会場には、写真や絵画、椅子、カリグラフィーなどを組み合わせたインスタレーションが展開。鏡の絵画や少年の写真、負の歴史といった無関係に見える要素が、相互に依存するような関係が構築される。

編集部

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