gallery αMの連続企画「絵と、 」最終回。中村一美が再検証した震災以降の絵画の可能性と不可能性とは

gallery αMで1年を通して開催されている蔵屋美香キュレーションによる連続企画「絵と、 」。その最終回となる、画家・中村一美による展示が開催される。会期は2019年1月26日~3月23日。

中村一美 破庵43(無垢路岐山) 2018 綿布にアクリル 227.4×162cm 作家蔵

 東京国立近代美術館企画課長の蔵屋美香キュレーションによる連続企画「絵と、 」。絵画をテーマにした本展は、1年にわたって5人の画家を個展形式で紹介しながら「絵画が現実に関わるよりよい方法」を探っている。

 本展のラストを担うのは、豊かな色彩とマチエールを特徴とする抽象画を手がける中村一美だ。中村は1956年千葉県生まれの画家。81年に東京藝術大学芸術学科を卒業後、84年に東京藝術大学大学院美術研究科油画を修了した。

 これまでBLUM & POE(ニューヨーク、ロサンゼルス)や、カイカイキキギャラリー(東京)、国立新美術館(東京)で個展を開催してきた中村。そのほか「JUXTAPOZ ×SUPER FLAT」(センチュリンクフィールドイベントセンター、2016)、「Japan Today」(ルイジアナ美術館ほか、1995)、「日本の現代美術 1985-1995」(東京都現代美術館、1995)をはじめとする話題のグループ展にも参加しつづけている。

 中村は「西欧のモダニズム絵画の到達点」と見なされていたアメリカ抽象表現主義絵画の研究から出発し、絵画の意義を考えるうえで日本の古代・中世絵画、中国の山水画、朝鮮の民画における空間表現や形象の記号的・象徴的作用に着目。「開かれたC型」「Y型」「斜行グリッド」など独自の造形言語を用いながら、記号的な絵画表現を確立した。

 本展は、94~95年に制作された崩壊する建築物を抽象絵画化した「連差ー破房」シリーズ、95~96年の「破庵」シリーズ、そして新作となる18年作の「破庵」シリーズで構成される。

 阪神淡路大震災を経た95年以降の「破庵」は、より抽象性が高められており、中村はその最新作において、東日本大震災以降の苛烈な状況に対しての絵画の可能性と不可能性の再検証を試みている。

 すべて抽象絵画で描かれた作品の背景には、社会情勢や災害などの過酷な現実があり、本展は、つねに絵画を通じて社会と対峙してきた中村の実践をたどる内容となるだろう。

編集部

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