武蔵野美術大学が主体となって運営するgallery αMが、ゲストキュレーターに蔵屋美香(東京国立近代美術館企画課長)を迎え、全5回の展覧会「絵と、 」を開催中。第1回目の五月女哲平からバトンを引き継ぐのは藤城嘘だ。
藤城は1990年東京都生まれ。2015年に日本大学芸術学部美術学科絵画コース卒業。インターネット世代を生まれ育ったバックグラウンドを個性とし、萌えキャラから文字、記号など「キャラクター」をモチーフにドローイングや絵画作品を制作。ネットカルチャーが生んだ「カワイイ」「萌え」などの日本的かつデータベース的な感性を下地に、「都市文化」や「自然科学」から発想を得た絵画に向き合っている。
また08年からは、SNSを通してweb上で作品を発表する作家を集めた「ポストポッパーズ」「カオス*ラウンジ」など、数多くの集団展示企画を展開。
これまでの個展は、17年の「ダストポップ」(ゲンロン カオス*ラウンジ 五反田アトリエ)や、13年の「芸術係数プレゼンツ 藤城嘘個展『キャラクトロニカ』」(EARTH+GALLERY)、10年の「モストポダン」(ビリケンギャラリー)など。なお、「カオス*ラウンジ」としては、福島県いわき市で催された「カオス*ラウンジ新芸術祭」(2015、16、17)や、宮城県石巻市の「Reborn Art Festival 2017」、「瀬戸内国際芸術祭2016」にも参加してきた。
東日本大震災以降、「日本の美術界では社会に対して率直に発言する作品が目立つようになった」と言うキュレーターの蔵屋は、政治的なメッセージを強く持つ作品がしばしば物事を単純化する可能性を危惧し、本企画を通して「絵画が現実に関わるよりよい方法」を探ろうとしている。
藤城自身も3.11によって揺らぎ続ける人々の深層心理を、ネットの動きを中心に注意深く追い続けており、日本における「神話」や「仏教的モチーフ」に関心を寄せてイメージを収集。絵の具やインクというメディアに変えて顕現している。
本展は、過去5年ほどの活動の中で制作した大作に加え、改めて日本のポップカルチャーへ目を向けなおした新作を発表予定。ネット上に広がる実態なき無数のイメージ群を、物質へ反転させることで問題の本質を突く藤城の「絵画」は何を示すのだろうか。