昨年の第12回shiseido art eggで入選を果たした冨安由真。その受賞者展として、銀座の資生堂ギャラリーで開催した個展は、来場者が最長2時間待ちという驚きの集客を記録し、話題となった。
近年冨安は、自身の制作の礎である絵画表現に加え、鑑賞者に現実と非現実の狭間を意識させるようなインスタレーション作品を展開してきた。そのうちのひとつが、人々から嫌厭されることの多い「心霊」に注目し、そういった日常における奇妙な体験を部屋型のインスタレーションとして再現したもの。その部屋の中に仕掛けを組み込み、超常現象的なシチュエーションを現実として創造することを試みた。
今回、東京・代官山のアートフロントギャラリーで開催される個展「Making All things Equal / The Sleepwalkers」では、これまで発表してきたインスタレーションに新たな試みを加えた作品と新作のペインティング数点がそれぞれ別のタイトルの下に発表される。たんにエンターテイメントではない新たな鑑賞体験は、経済と科学の発展が見落としてきた不確かな存在への洞察を鑑賞者に促すだろう。