民藝で生の感動を。深澤直人ディレクション「民藝 MINGEI -Another Kind of Art」が21_21 DESIGN SIGHTで開幕

プロダクトデザイナーであり、日本民藝館館長を務める深澤直人のディレクションのもと、同館のコレクションを中心に新旧様々な民藝品約100点をピックアップして紹介する展覧会「民藝 MINGEI -Another Kind of Art」が東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTでスタート。その内容をレポートでお届けする。

展示風景より

 民衆の用いる日常品の美に着目した柳宗悦(1889〜1961)によって1925年に名付けられた、無名の職人たちによる民衆的工芸「民藝」。民藝の特徴でもある風土や風習を生かしたものづくりは、世代を超えて受け継がれていくなかで、素材、色、工程、用途、かたちなどの独自性が際立ち、革新的で衝動的な、枠にとらわれない創意工夫へと発展していった。

 本展では、プロダクトデザイナーであり日本民藝館館長を務める深澤直人が、同館の所蔵品を中心に新旧様々な民藝を展示するというものだ。

展示風景より、ロビーの様子。日本民藝館で実際に使用される机などが並ぶ
展示風景より、ギャラリー1の様子

 柳がなぜ日本民藝館を設立したのか、その意図が書かれたテキストと、深澤による「無垢なものづくりの態度にくぎ付けになる」と記されたメッセージが並ぶロビー。そしてギャラリー1には、中国・宋時代のシンプルな器に魅せられた深澤が、館長になる以前より収集しはじめたという骨董品が集結。真贋を問わず、日常の食卓で使用しているという品々も揃う。

 またここでは、音楽家で映像作家の岡本憲昭が、民藝作家のもとを訪れた映像も上映。「ものの背景にある人を見せることで、奥行きのある鑑賞体験ができるのではないかと思いました」と岡本は話す。

展示風景より、ギャラリー2の様子
展示風景より、左奥から時計回りに《蚊やり爐(いろり)》(瀬戸[愛知]、19世紀)、《屋根獅子(シーサー)》(沖縄、20世紀)、《達磨木型》(19世紀)、《達磨木型》(19世紀)、《面型》(19世紀)、《蓮型水吞》(朝鮮半島、19世紀末期)、《緑釉魚形皿》(瀬戸[愛知]、19世紀)、《焼締面瓦》(朝鮮半島、19-20世紀)、中央は《茄子形煙草入》(19世紀)
展示風景より

​ そしてギャラリー2では、深澤が直感にしたがって分類したという日本民藝館の所蔵品が18のケースの中に並ぶ。これらを分類するとき、深澤の頭に浮かんだという言葉をそれぞれのブースに大きく書かれているため、こちらにも注目してほしい。

 またこのエリアでは、大矢真梨子が日本民藝館をとらえた写真作品や、カナダ人映像作家のマーティ・グロスが民藝をテーマに撮影したフィルム《日用品をつくる》を修復、デジタル化した映像も上映されている。

展示風景より
展示風景より。柳宗悦《心偈》1950代

 「日本民藝館は柳宗悦の美学の証」と話す深澤。柳と陶芸家の濱田庄司、河井寛次郎が肩を並べる写真が飾られた部屋では、日本民藝館を紹介するアーカイヴ写真を紹介。柳宗悦が晩年の思いを綴った書「心偈(こころうた)」も展示される。

展示風景より、現代のつくり手による作品が並ぶロビー
展示風景より、『民藝』のこれまでの表紙

 また、出口のロビーでは、各地に存在する現代のつくり手によって制作された作品や雑誌『民藝』のバックナンバーなどを展示。これまでに受け継がれてきた民藝のあり方を見ることができる。

深澤直人

 「民藝を通して生の感動を感じてほしい。そして、柳が仲間とともにわいわいと作品を収集し、“すごい”と言い合っていた世界観を再現したい」と語った深澤。友人・知人と連れ立って、感想を述べながら鑑賞するのをおすすめしたい展覧会だ。

編集部

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