国宝《一遍聖絵》全12巻を展示。京都国立博物館で特別展「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」が開催

踊り念仏で知られる時宗とその宗祖・一遍上人。この時宗の基盤を整備し、大きく発展させた二祖・真教上人の700年遠忌にあたる2019年、京都国立博物館で特別展「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」が開催される。

円伊筆 国宝 一遍聖絵 巻12(部分) 鎌倉時代 神奈川・清浄光寺(遊行寺)蔵 ※通期展示、巻替あり

 一遍(1239~89)が鎌倉時代に開いた「踊り念仏」で知られる宗派・時宗。一遍は念仏を唱えることで誰もが往生できると説き、諸国を行脚し、念仏札を配り布教に努めた。この時宗を大きく発展させたのが二祖である真教(1237~1319)であり、2019年は真教の700年遠忌に当たる。

 この真教700年遠忌を記念し、京都国立博物館で開催される特別展「国宝 一遍聖絵と時宗の名宝」は、時宗に伝わる名宝の数々を一堂に紹介するもの。時宗をテーマにした大規模展は今回が京都初となる。

円伊筆 国宝 一遍聖絵 巻2(部分) 鎌倉時代 神奈川・清浄光寺(遊行寺)蔵 ※通期展示、巻替あり

 展示は「浄土教から時宗へ」「時宗の教え 一遍から真教へ」「国宝 一遍聖絵の世界」「歴代上人と遊行 時宗のひろまり」「時宗の道場のその名宝」の5章構成。

 なかでも見どころとなるのは、鎌倉時代の国宝《一遍聖絵》だ。絹地のこの絵巻は、一遍の没後である1299年に描かれたもので、一遍の生涯を12巻におよぶ絵巻で紹介したもの。

 一遍の高弟・聖戒(しょうかい)が著述し、出自が謎に包まれた絵師・円伊(えんい)によって描かれたこの作品。山水や寺社、そして人々の様子を克明が描き出された同作は、中世の歴史を語るうえで重要な作品だ。

円伊筆 国宝 一遍聖絵 巻6(部分)  鎌倉時代 神奈川・清浄光寺(遊行寺)蔵 ※通期展示、巻替あり

 本展を担当する京都国立博物館研究員・井並林太郎はこの作品について「日本美術史上、ほかにない名品。旅を描いた鎌倉時代絵巻の傑作です」と語る。「大和絵(平安時代の国風文化の時期に発達した日本的な絵画)と漢画(中国絵画の画題・手法による日本絵画)の技法を融合させたもので、この時代の作品としてほかにはありません。民衆の人々の顔や仕草が非常に細かく描かれており、温かいまなざしが感じられます」。

 なお、このほか本展には神奈川・藤沢や京都、奈良の道場(時宗の寺院)に伝えられてきた文化財を多数展示。清浄光寺の重要文化財《後醍醐天皇像》をはじめ、阿弥陀寺の重要文化財《阿弥陀如来立像》など出品総数は134件におよぶ(うち国宝3件、重要文化財34件、重要美術品2件)。

重要文化財 阿弥陀如来立像 平安時代〜鎌倉時代 京都・知恩院蔵 ※通期展示

編集部

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