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松本竣介

Shunsuke Matsumoto

 松本竣介は1912年東京都生まれ。幼少期から岩手県盛岡市で過ごし、盛岡中学校1年生の時に聴力を失う。中学3年生だった29年に盛岡中学校を中途退学し、上京。その後、太平洋画会研究所に通った。35年、鶴岡政男らが創設したNOVA美術協会の展覧会に出品し、同人に推薦。また同年秋には、二科展で《建物》(1935)が初入選する。36年には雑誌『雑記帳』を創刊するも、売れ行きが伸びず37年12月号(通巻14号)で廃刊している。戦時中、雑誌『みづゑ』の1941年1月号に軍人が参加した座談会「国防国家と美術―画家は何をなすべきか―」が掲載された際は、同誌4月号に「生きてゐる画家」の題名で論考を発表。画家の精神の自立を説いた。《Y市の橋》(1943)や《立てる像》(1942)など、都会の風景や、そこで生きる人々を数多く描き、昭和前期の近代洋画史に足跡を残すも、48年に結核が原因で死去。享年36。死後、遺族の寄贈により68年に神奈川県立近代美術館旧鎌倉館の一室が「松本竣介記念室」として公開された。近年の主な回顧展に2012〜13年にかけて開催された「生誕100年松本竣介展」(岩手県立美術館などを巡回)、「松本竣介 創造の原点」(神奈川県立近代美術館 鎌倉別館、2016)など。