2018.10.11

川島小鳥がモノクロで写し取った、素の尾野真千子。新作写真集『つきのひかり あいのきざし』の出版記念展が開催

写真家・川島小鳥の新作写真集『つきのひかり あいのきざし』の出版記念展が、東京のGALLERY MoMo Ryogokuで開催される。本著は、女優・尾野真千子とともに台湾と奈良を旅し、共有した時間を、自身初となるモノクローム写真で収めたもの。会場では、写真集に収録されなかった作品も見ることができる。会期は10月20日~11月18日。

川島小鳥 『つきのひかり あいのきざし』より
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 川島小鳥は1980年生まれの写真家。これまでに『未来ちゃん』(2011)、『明星』(2014)、谷川俊太郎との共著『おやすみ神たち』(2014)、『ファーストアルバム』(2016)、台南ガイドブック『愛の台南』(2017)など多くの写真集を発表してきた。

 活動初期より、主に人物とその周辺にある風景を撮影し続けている川島。ひとりの少女が成長していく様子や、台湾を拠点に若い男女の姿など、様々な人物が放つ一瞬の輝きを明るくポップに切り取ってきた。その独自の作風は高く評価され、主な受賞歴に第42回講談社出版文化賞写真賞(2011)、第40回木村伊兵衛写真賞(2014)がある。

 そんな川島が10月30日に刊行する新作写真集『つきのひかり あいのきざし』の出版記念展が、東京のGALLERY MoMo Ryogokuで開催される。同書は、女優・尾野真千子とともに台湾と奈良を旅し、共有した時間を、自身初となるモノクローム写真で収めたものを中心に構成。色彩にとらわれることなく、陰影の世界に光を求めた川島の写真に映る尾野は、時折少女のようなおどけた表情やポーズを見せるなど、カメラの前の「被写体」であることを忘れさせるほど素の姿だ。

川島小鳥 『つきのひかり あいのきざし』より

 尾野が持つ様々な表情を独自の距離感でとらえ、孤独やそのなかにある人間としての美しさを繊細に感じ取り、写真に残そうと試みた川島。その作品には、初期作品を思い出させるポーズや表情はあるものの、ファンタジーの要素は薄れ、被写体のリアルで自然な一瞬が切り取られ、これまでの川島作品からの新たな展開がうかがえる。 

 本展では、写真集に収録されなかった作品もプロジェクターで投影し発表。より多くの作品にリアルな二人の関係を辿ることで、撮るものと撮られるものの共作であることがわかるだろう。