多摩美術大学芸術学科教授・家村珠代が担当する展覧会設計ゼミでは、キュレーターの意図に沿った一般的な企画展や、作家が自主的に企画する展覧会とは異なる、新たな展覧会やキュレーションのあり方を模索。化学反応が起こりやすいプラットフォームを目指し、その実験的なアプローチとして、同大学を舞台に「家村ゼミ展」を企画している。
今年の家村ゼミ展は、同大学の卒業生でもあるアーティストの泉太郎をピックアップ。「今年は、泉太郎。」を唯一のキーワードとして、作家・学生・教員が完成を定めない進行形のドキュメントとして、ひとつの「展覧会」のかたちを示す展覧会として開催される。
展覧会タイトルは非常に長く、そのなかで「余地の市」「影の底、鮭の腹」「ミュージック/ミュージッシャン」など謎めいた語句を多く取り上げながら、会期中つねに「展覧会タイトルは生き物のように変化します」とされている。
本展では、例として「地表」と呼ぶものがやがて「地層」となっていくように、考える過程そのものを運動体として提示する行いを「展覧会」と呼び、不定形であり、かつ突然変異をも歓迎する様態の可能性を、泉とともに探っていくことを試みる。
昨年パリのパレ・ド・トーキョ―(パリ)で開催された個展が大きな話題となった泉。今日のアートシーンを牽引する泉の作品と「大学」という空間性は、どのように作用しあうだろうか。