樂吉左衞門と、アンフォルメルの中心的作家ヴォルスが共演。佐川美術館で「吉左衞門X WOLS」が開催中

陶芸家・15代樂吉左衞門自らが設計創案・監修した樂吉左衞門館の展覧会シリーズ「吉左衞門X」。その第9回では、第二次大戦後の主要な美術運動のひとつ「アンフォルメル」を代表する作家、ヴォルスとのコラボレーション展を開催中だ。会期は10月6日〜2019年3月31日。

左から樂吉左衞門《焼貫黒樂茶碗》(2018)、ヴォルス《顔》(カミーユ・ブリアン著『 鯨の街 』の挿画より、1945/62)

 ヴォルス(シュルツ・ヴォルフガング=オットー=アルフレー)は1913年ベルリンに生まれ、おもにフランスで活動。幼少期より音楽、絵画、写真、詩に親しみ、20世紀の主要な前衛美術「アンフォルメル」の中心的画家のひとりとみなされた。抽象表現主義の先駆者とも言われるが、特定の流派やグループに属することはなく、放浪のうちに38歳の短い人生を終えた。

樂吉左衞門 白土焼貫茶碗  2018

 いっぽうの樂吉左衞門は1949年京都市生まれの陶芸家。日本独自の陶芸である樂焼の家系の15代目。73年に東京芸術大学美術学部彫刻科を卒業後、イタリア留学を経て81年十五代吉左衞門襲名。伝統に根ざしながらそこに安住することなく、つねに斬新な感覚を示す造形美の世界を表現し続けている。

 細いひっかき傷のような線の集合と、不定形の抽象を描いたヴォルス。古代中国の思想「老子」にも深い関心を持ち、戦後の混乱期には、サルトルなどの実存主義の作家とも交流を深め、深く自己自身を見つめた姿勢に15代樂吉左衞門は深く共感し、自身の心と重なるところがあると感じているという。

ヴォルス 大きな毛虫(ルネ・ド・ソリエ著『ナチュレール』の挿画より) 1946/62

  本展では、ヴォルスの油彩画1点、水彩画6点(前・後期で入れ替えあり)、銅版画17点と樂吉左衞門による茶碗21点を紹介。

 吉左衞門が制作した樂茶碗とヴォルス作品を展観することにより、二者に通じる深い精神性に触れることを試みる。

 

編集部

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