平出隆は1950年生まれの詩人、散文家。現在多摩美術大学の教授を務め、国際的なベストセラーとなった小説『猫の客』(河出書房新社)、『遊歩のグラフィスム』(岩波書店)などの著作がある。また、今年8月には自伝的エッセイ『私のティーアガルテン行』を紀伊國屋書店から刊行した。
平出はそのほかにも、造本や装幀の実験的な仕事を展開している。2010年に創刊された「via wwalnuts」叢書は、手紙としてつくられた書物。表紙代わりの封筒に直接宛名や切手が貼られ、中に小さな本が収められているという仕組みだ。
こうした言葉や出版物への意識をもとに、DIC川村記念美術館で開催される「言語と美術─平出隆と美術家たち」。本展では、言語と美術の交差から生まれる「対話」の多様な形態に注目し、同館の収蔵作家を含む美術家たちについて、作品に関わる言葉や出版物とともに新たな光を当てる。
出展作家には架空の地域の切手をつくり続けた画家、ドナルド・エヴァンズをはじめ、ジョゼフ・コーネル、加納光於、河原温、中西夏之、瀧口修造、若林奮など、平出がこれまで題材としてきた作家の名前が並ぶ。
また、本展の会場構成は建築家の青木淳が担当。言葉が通常のかたちから離れ、造形性を伴いながら拡散してゆく平出独自の概念「空中の本」を実現するべく、「透明梁」を設計するという。