日々を克明に描き続けた異色の画家・吉村芳生。その全貌を紹介する展覧会「吉村芳生 超絶技巧を超えて」が東京ステーションギャラリーで開催

写真や新聞を細密に描いた鉛筆画などで知られる画家・吉村芳生の展覧会「吉村芳生 超絶技巧を超えて」が、東京ステーションギャラリーで開催される。600点以上の作品で吉村の全貌を紹介する本展は、中国・四国地方以外の美術館では初の個展となる。会期は11月23日〜2019年1月20日。

吉村芳生 新聞と自画像2008.10.8 毎日新聞(部分) 2008 個人蔵

 吉村芳生は1950年生まれの画家。版画のフィールドで美術展への出品を重ね、いくつかの美術館に作品が収蔵されたものの、知名度は高くなかった。90年以降は故郷・山口で地道な活動を続けていたが、2007年に状況は一変。森美術館で開催された「六本木クロッシング2007・未来への脈動」に出品された作品群が、大きな話題を呼んだ。

 このとき吉村は57歳。その後、各地の美術館で作品が展示され、山口県立美術館で個展を開催するなど快進撃が続いたが、13年に病のため逝去した。

吉村芳生 ドローイング 金網(部分) 1977 個人蔵

 本展では、吉村の600点以上にのぼる作品を3部構成で紹介する。日常のありふれた風景をモノトーンのドローイングや版画で描いた初期の作品群、色鉛筆を駆使してさまざまな花を描いた後期の作品群、そして生涯を通じて描き続けた自画像の数々。

 一番の見どころは、吉村の代名詞とも言える「新聞と自画像」シリーズだろう。作品は新聞紙の上に鉛筆で描かれた自画像に見えるが、実は新聞紙そのものも鉛筆で一字一字描かれている。一見写実主義のような作品だが、たんに対象を熟視して描かれたわけではないという。どんな秘密が隠されているのか、ぜひ会場で発見したい。

吉村芳生 無数の輝く生命に捧ぐ 2011-13 個人蔵

 膨大な時間を費やして制作された、写真と見紛うほどの描写のうえに成り立つ作品の数々。吉村が意味と無意味の間で探り続けた、描くこと、表現することとはなんなのか。「吉村芳生 超絶技巧を超えて」と題された本展では、超絶技巧のその先にある意味に迫る。

編集部

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