室町時代に大成した「能」。江戸時代には幕府の儀式(式楽)として演じられるようになり、武家のたしなみとして演能や能の稽古に励む大名も多くいたという。
演能に使われる能装束は、武家の公服や平服をもとに、桃山〜江戸時代にかけて独自に発展。能の幽玄な世界を表現するために、織や刺繍、摺箔(すりはく)という桃山時代以来の伝統的な加飾技法などが用いられた。
本展では、備前池田家伝来の能装束約1000点を所蔵する岡山・林原美術館のコレクションを紹介。一番の見どころは、重要文化財4点を含む選りすぐりの能装束40点。その他にも鬘帯(かづらおび)・腰帯、能に使われる扇である中啓(ちゅうけい)、岡山藩主の池田綱政が使用したとされる能面などが展示される。
質・量ともに優れた林原美術館のコレクションを楽しめる貴重な機会となる今回の展覧会。桃山時代から江戸時代後期にかけて、技術の粋が集まった彩り豊かな能装束の世界をゆっくりと堪能したい。