35年にわたり「樹」をモチーフに絵画を描き続ける画家・日高理恵子。入念な観察とデッサンに基づく作品群は、樹が持つ無数の枝、葉、幹、花芽の存在感とともに、樹に包まれているような感覚、枝の先が空に向かって伸びていく空間的・時間的な視野の広がりを感じさせる。
その集大成的作品集『日高理恵子作品集1979ー2017』の刊行を記念して、小山登美夫ギャラリーと森岡書店の2会場にて個展が開催される。
日高理恵子は1958年東京都生まれ。1995年から96年まで文化庁芸術家在外研修員としてドイツに滞在。これまで、国立国際美術館(大阪、1998年)、アートカイトミュージアム(デットモルト、ドイツ、2003年)など国内外で個展を開催し、日本画の画材を用いた作品をとおして、現代美術のフィールドで活躍してきた。
2017年発売の『日高理恵子作品集1979-2017』は、2017年のヴァンジ彫刻庭園美術館の個展での展示作品をはじめ、70年代後半に作家が惹かれ、模写した過去の画家たちの習作や素描、水平の視点で描かれた樹々、その後展開する「樹を見上げて」「樹の空間から」「空との距離」シリーズを含む、約100点の図版を収録した初作品集となる。
作品集出版にあわせ、このたび都内2ヶ所で開催される日高の個展。まず小山登美夫ギャラリーのスペースは、80年代前半の初期作品や2017年の「空との距離」シリーズ最新作などで構成。
そして「1冊の本」をコンセプトに運営される森岡書店では、版画「樹の空間から」シリーズ、および作品集『日高理恵子作品集1979-2017』そのものを展示する。
作品集収録作品のなかから作家自身が作品を選定し、展示する本展。日高が「樹と空と」に向けてきた眼差しを追いたい。