1864年にスイスで生まれ、人生の大半を精神病院で過ごしたアドルフ・ヴェルフリ(1864〜1930)。35歳の時に初めて病院内で絵を描き始め、以後30年以上にわたって架空の大作自叙伝や物語作品を制作し続けた。
病棟内の狭い一室で制作された代表作『揺りかごから墓場まで』は、「聖アドルフⅡ世」と呼ばれる自らが世界を旅する壮大な物語だ。テキスト、挿絵、楽譜のようなイメージが画面を覆い尽くし、ときには物語とリンクする音楽や詩が制作されることもあったという。66歳で没するまでに制作された作品群は、全45巻、25000ページにも及ぶ。
ヴェルフリの作品は、シュールレアリスムの画家たちをはじめ多くの芸術家に影響を与え、「アール・ブリュット」という概念を提唱したジャン・デュビュッフェにも高く評価された。本展では、未公開作品や4メートルの大作を含む70点以上が公開される。なお本展は、兵庫県立美術館からの巡回となる。