兵庫県立美術館では1989年から、作品に手で触れることで鑑賞できる「美術の中のかたち―手で見る造形」というシリーズ展をほぼ年に一度のペースで開催している。毎回様々なアプローチを行い、視覚優位の美術鑑賞のあり方そのものを問う機会となってきた。
第29回目となる 同展では、金属彫刻や「ゼロ・プロジェクト」で知られる中ハシ克シゲを出展作家に迎える。
中ハシ克シゲは、1955年香川県生まれ。80年代に身近な人物や動物をモデルにしたブロンズ彫刻を制作し、90年代からは松や力士など、日本的なモチーフをテーマにしたポップかつキッチュな金属作品で注目を集めた。90年代末からは、プラモデルのゼロ戦を接写・拡大した写真プリントを貼り合わせて制作した戦闘機を展示・焼却する「ゼロ・プロジェクト」を国内外で展開。近年は自身の原点である塑造に立ち返り、粘土による作品を制作している。
同展出品作品の制作では、中ハシは日々触れ合っている愛犬をモチーフにし、アイマスクをすることで視覚を遮断し、触覚だけで造形することを試みたという。
中ハシの作品を通じ、「彫刻における触覚的なものとはなにか」という根本的問題をあらためて考えるという同展。ぜひ実際に美術館に足を運び、目だけではなく「手で見る」ことで作品を鑑賞したい。