俵屋宗達から田中一光まで。琳派のデザイン性に迫り、現代への継承をとらえる展覧会が山種美術館で開幕
2018年は江戸へ琳派を根付かせた酒井抱一の没後190年、およびその弟子である鈴木其一の没後160年を迎える年だ。それを記念して、東京・広尾の山種美術館では琳派の伝統をたどる特別展「琳派 ―俵屋宗達から田中一光へ―」を2018年5月15日から7月8日まで開催。17世紀の俵屋宗達から20世紀の田中一光まで、デザイン性豊かな琳派のスタイルの系譜を探る本展。その見どころをお届けする。
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琳派とは、江戸時代の俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一を軸に、主題表現やスタイルを発展的に継承した芸術家たちのこと。流派は通常、血縁関係や師弟間で受け継がれるが、琳派は間接的に先人を学に慕う私淑による結びつきによって広まった。実際に、16〜17世紀の宗達は町絵師、17〜18世紀の光琳は高級呉服商の子息、そして18〜19世紀に生き、両者の作品を見出した抱一は大名家出身と、出自も各々異なっている。
本展は、そのようにゆるやかに結びついてきた琳派の継承を、山種美術館の豊富なコレクションを中心に、江戸から明治、大正、昭和となぞる内容だ。とくに、20世紀に継承したのは日本画家だけではなく、グラフィック・デザイナーの田中一光へも受け継がれたということを、東京国立近代美術館のポスターコレクションを展示しながら示している。
田中一光のポスター《JAPAN》に迎え入れられる第一展示室冒頭には、江戸琳派の名品が並ぶ。とくに注目したいのは、修復を終えた同館所蔵の伝 俵屋宗達《槙楓図》(17世紀)だ。同作品は修復後、本展が初お披露目となる。
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ほかにも、抱一によるうちわや、抱一の弟子・其一による華やかな《四季花鳥図》(江戸時代)などの目にも楽しい優品がならぶ。
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明治以降の作品では、そのデザイン性の高さで知られる神坂雪佳による作品や、今村紫紅と安田靫彦がそれぞれ風神雷神を絵付けした茶碗も展示されている。とくに茶碗が展示されるのは同館でも久しぶりとのことなので注目したい。
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左 今村紫紅(絵付)・清水六兵衛[4代](作陶) 大正〜昭和 山種美術館蔵
右 安田靫彦(絵付)・清水六兵衛[4代](作陶) 大正〜昭和 山種美術館蔵
本展監修者で、山種美術館顧問・明治学院大学教授の山下裕二は「琳派というのは血縁ではなく私淑の歴史であり、時空を越えて飛び火する現象だったわけです。その意味では、20世紀において、一番強く琳派に私淑し、飛び火によってその表現が大きく燃え上がったのは、他ならぬ田中一光さんだと僕は思っています」と語る。田中のポスター作品は第一会場冒頭のほか、第二会場にてかきつばたをモチーフにした《田中一光グラフィックアート 植物園 #1》(1990、東京国立近代美術館蔵)などの作品を見ることができる。
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琳派の華やかさだけではなく、デザイン性の高さに注目し、現代にいたるまでの系譜を追うことができる展覧会。その現代にいたるまでの影響関係を楽しみながら鑑賞したい。