尾形光琳と鈴木其一の傑作を公開
特別展「燕子花図と夏秋渓流図」

4月12日より、尾形光琳による国宝「燕子花図屏風」と鈴木其一による「夏秋渓流図屏風」を同時に鑑賞できる特別展が、根津美術館で開催される。

尾形光琳 国宝 燕子花図屏風(右隻) 18世紀 6曲1双 根津美術館蔵

 江戸時代の絵画を代表する画家・尾形光琳(1658〜1716)と鈴木其一(1796〜1858)。京都の高級呉服商の家に生まれた光琳は、江戸時代中期に活躍し、本阿弥光悦や俵屋宗達など江戸初期の町衆文化のなかに生まれた「琳派」を大成した画家として知られている。一方の其一は、紫染職人を父に持つと伝えられ、光琳の画風を再興した江戸琳派の祖・酒井抱一の高弟にあたり、江戸時代後期に多くの作品を残している。

 本展では、この2人の画家の二大傑作を同時公開。光琳の《燕子花図屏風》(18世紀)は、総金地の6曲1双屏風に、左右隻の対照が計算された構図で、濃淡の群青と緑青のみによって燕子花の群生が大胆に描き出されている。其一の《夏秋渓流図屏風》(19世紀)では、渓流の流れる檜の林が描かれ、右隻は山百合の咲く夏景、左隻は桜の葉が紅葉した秋景を表している。2作品の表現は大きく異なる一方で、もっとも高価な絵具のひとつである「群青」を多用していることから両者ともに特別な注文で制作されたこと、また落款(署名と印章)の形式や書体から、それぞれの画家が40歳代半ばで描いた作品であり、ともに画業の転換点に位置する作品であるなどの共通点もうかがえる。

 そのほか、其一と同じ時代を生きた浮世絵師・歌川広重(1797〜1858)の《高尾太夫・吉原通船図》(19世紀)や、パリで印象派の画家たちと交流した日本画家・渡辺省亭(1852〜1918)の《不忍蓮・枯野牧童図》(19〜20世紀)といった、作品を展示。光琳と其一の作品とともに、宗達以来の琳派を鑑賞できる貴重な機会となる。

編集部

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