1970年代のニューヨークを中心に活躍したゴードン・マッタ=クラーク(1943〜78)の、アジア初の大回顧展が東京国立近代美術館にて開催される。
活動期間は約10年、わずか35歳という若さでこの世を去ったゴードン・マッタ=クラークは、アートのみならず、建築やストリートカルチャー、食など幅広い分野で多くの作品を生み出し、没後40年を経た今日も絶大な人気を集めている。2018年には本展のほかフランスで、2019年にはエストニアでの個展も開催予定となっている。
マッタ=クラークが生きたのは、世界経済が爆発的成長を始めた1970年代。まさに資本主義の実験場だったニューヨークでの生活を経験したマッタ=クラークは、人々の生活を豊かにするために何ができるかという模索をアートで試みた。
本展は「住まい」「ストリート」「港」「市場」「ミュージアム」という5つのキーワードに沿って構成され、流転する空間と記憶、エネルギーの循環と変容、水と陸の際、食文化の変容という問題にアプローチし、豊かな生活の可能性を拓いていく。展覧会の冒頭では、ホワイトキューブに対して批判的であったマッタ=クラークの「ミュージアム」に関わるプロジェクトも紹介。本人没後の現在、「マッタ=クラーク」という対象を展示することの今日的意味を探る。
出品点数は彫刻、映像、写真、ドローイング、関連資料など約200点。マッタ=クラークの作品の多くは個人蔵や、メトロポリタン美術館をはじめ、ニューヨーク近代美術館など欧米の著名美術館に所蔵されており、ほとんど欧米から出ることの無かった作品ばかり。しかし今回はマッタ=クラークの代表作でこれまでほとんどアメリカ国内から出ることが無かった、建築の一部を切り取る「ビルディング・カット」シリーズの中で最大規模の立体作品《スプリッティング:四つの角》が初来日する。
軽やかでクール、そしてポエティックな作品群は、大きな変化の途上にある東京という地において、私たち一人ひとりが考えるためのヒントを示してくれるだろう。