「だまし絵(トロンプ・ルイユ)」の分野で、唯一無二の独創的な作品を数多く生み出したマウリッツ・コルネリス・エッシャー(1898〜1972)。コンピューターの存在しない時代に制作された緻密で数学的な作品は、当時社会的なブームとなり、クリエイターだけでなく、数学者など幅広い専門家たちへもインスピレーションを与えてきた。
2018年、エッシャーが生誕120年を迎えるのを記念し、東京で12年ぶりとなる大規模な回顧展が開催されることとなった。本展では、世界最大級のエッシャー・コレクションを誇るイスラエル博物館が所蔵する作品が初来日。実際にありそうで現実にはあり得ない風景を描いた《相対性》(1953)、《滝》(1961)などの代表作に加え、初期の作品や直筆のドローイングなど、合わせて約150点が展示される。
見どころのひとつとなるのが、幅4メートルにも及ぶ大作《メタモルフォーゼII》(1939-40)だ。抽象的な形がだんだんと具体的な姿に変容していく横長の構図を特徴とする本作は、後のエッシャーの代表的な構図の原点とも言える。本展では、貴重な初版が公開される。
また、映像技術を駆使した参加型コンテンツも展開。現代から見たエッシャーの不思議な世界を体験することができる。