ハリウッド女優の呼びかけを発端に広がり続ける、「#MeToo」の動き。今回声をあげたのは、2001年から約15年にわたって荒木経惟(アラーキー)の「ミューズ」として作品モデルとなってきたダンサーのKaoRiだ。
KaoRiは2018年4月1日、ウェブサービス「note」上で「信じる信じないに関わらず、me tooも関係なく、彼の作品鑑賞の一つの視点にしてもらえたらそれでもう十分(原文ママ)」と前置きをした上で、写真家・荒木経惟との長年にわたる関係性の内実を公表。
そこには、「写真家とモデルで、恋人関係ではなかった」という二人のあらゆる撮影に同意書が存在しなかったこと、荒木作品のために行ったパフォーマンスすべてが無報酬であったこと、ヌード撮影を強いられた過去などが綴られており、「ミューズ」の役割の裏側にあった不均衡な関係性を明らかにした。
こうした経験をふまえ、仕事のスタイルが多様化した現代における契約書の重要性と、「芸術という仮面をつけて、影でこんな思いをするモデルがこれ以上、出て欲しくありません(原文ママ)」と訴えるKaoRi。約7000字にわたる告白の最後は、関係性や立場に上下をつけず「お互いがお互いに尊重しあって発展する世の中になりますように」と締めくくられている。
現在、セックス博物館(ニューヨーク)で開催中の個展の一部では、被写体となる女性モデルたちとの関係性にも焦点が当てられている荒木。今回のKaoRiの意思表示は、アーティストとモデル、ミューズ信仰という構図に隠された問題の一端を示すものになっている。