新たなオークション会社「東西ニューアート」が誕生。キーマンに聞く、目指すオークションのかたちと次世代へつなぐ責任【3/3ページ】

オークション出品作品紹介

 ──11月8日に迫った、東西オークションとしては初となる秋の公開オークションですが、今回はとくに古今東西、様々なジャンルの傑作が揃っています。このなかから、とくにトップロット(主要出品作)として注目すべき作品やその見どころを、いくつかご紹介いただけますでしょうか。

朝倉 今回のラインナップは日本絵画と西洋絵画に加え、ジュエリーや時計と多岐にわたるジャンルで構成されています。なかでも注目いただきたいのが葛飾北斎の名品です。

後藤 葛飾北斎の肉筆画《雪中美人図 蜀山人賛》(1813-19頃)をお預りできたことは、東西オークションのスタートにふさわしく、とても誇らしいことです。北斎の肉筆画のなかでも人気のある美人画で、かつ非常に優れた構図のものです。北斎の年齢でいうと50〜60代にかけて描かれたものですが、この時期の肉筆は数も非常に少なく、さらに本品は状態がとても良い。こういったものがオークションに出るというのは、大変貴重な機会です。 

──展覧会歴を見ますと、2005年に東京国立博物館で開催された「北斎展」で展示されているのでご覧になったことがある方がいらっしゃるかもしれませんね。また重要美術品等認定作品とされています。つまり、落札したとしても海外に持ち出しができないということですね。

後藤 本作は1937年に重要美術品に認定されました。その翌年の1938年に、現在の上皇さまである昭仁親王の生誕を記念して、大阪市立美術館で全国の国宝や重要文化財などを集めた『東洋美術大展覧会』が開催されたのですが、その一点として出品されています。当時の記録の上巻一番最後のページにも記録として収められておりますので、恐らくその時期にたくさんの方が大阪でご覧になったかと思われます。また、太田記念美術館で研究をされていた永田生慈先生もこの作品について触れた論文を残しています。このように有名な作品ですが、個人の方が長く所蔵されていたため、幻の作品とされていましたが、2005年の東京国立美術館の北斎展で、ようやくまた日の目を見ることになったものです。

──今回のオークションの表紙に採用された、ベルナール・ビュッフェの水彩作品や、アール・ヌーヴォーのガラス作品も目を引きます。これらの作品の注目すべきポイントはどこでしょうか。

朝倉 ベルナール・ビュッフェの《小さな帽子の道化師》(1978)は、ビュッフェの画題として代表的なピエロを描いたものです。ビュッフェはピエロを自分の自画像として描いていて、自身の内面を映し出しているとされます。この作品は線もすごく良く、かなり質が良い作品です。

ベルナール・ビュッフェ 小さな帽子の道化師 1978 Lot. 111

工藤 アール・ヌーヴォー期のエミール・ガレとドーム兄弟によるランプはぜひ注目していただきたいですね。今回一番の目玉はガレの大型の《シャクナゲ文ランプ》(1904-31)です。最近は住宅事情から小さい作品を好まれる方が多い傾向にありますが、ガレといえば迫力のあるサイズと、大胆な柄がやはり魅力です。本出品作はガレの作品を代表するものといっても過言ではないでしょう。

左からエミール・ガレ《シャクナゲ文ランプ》、ティファニースタジオ《魚文テーブルランプ》、ドーム兄弟《蝉と朝顔の葉、麦穂文花瓶》、

 いっぽうのドームはガレとは異なり、繊細な色使いや柄の細かさが特徴です。出品される《蝉と朝顔の葉、麦穂文花瓶》は、そんなドームの良さがよく出ている作品だと思います。繊細な柄の下地があって、そこに生まれたばかりの半透明状態のセミがついて、朝顔のつるが伸びている。朝方にセミが羽化している瞬間というのを捉えていて、まさにドームらしい繊細さが表れています。

 《魚文テーブルランプ》(1900-1910)にも注目してほしいです。本作を手がけたティファニースタジオは、そもそも作品数が少なく、出品があれば人気が集中し高額になります。今回出品されるものはその中でも魚柄が良い状態で残っており、希少価値が高いものです。

ティファニースタジオ 魚文テーブルランプ 1900-1910

──ジュエリーはバラエティ豊かなラインナップですが、とくに注目してほしいものはありますか。

鈴木 ジュエリーはバラエティ豊かに揃えていますが、とくにハイジュエリーを中心に紹介しましょう。ブルガリの《パール ダイヤモンド ゴールドネックレス & イヤリング》は写真だとなかなか伝わりにくいですが、かなり複雑な編みでパールを埋め込んだものです。最近ではブルガリでもここまで手の込んだ作品は、なかなか出ませんね。

 カルティエの腕時計《タンク レベルソ デュオ ゴールド》は、出品者の方がオリジナルでダイヤをあしらったものして、ほかでは販売していない希少なものです。裏側はスケルトンになっており、持ち主がムーブメント内を覗く楽しみもあります。

タンク レベルソ デュオ ゴールド 

 そしてヴィンテージのルイ・ヴィトンのトランク《マル・クリエ 100 2つのトレー付》は、いまもルイ・ヴィトンのカタログに入っているものですが、そのヴィンテージです。重量は28キログラムほどあるので、船旅などにも使えますが、状態がとてもきれいなのでガラス板を上部に載せて、テーブルとしてお使いになることもできるはずです。

ルイ・ヴィトン マル・クリエ 100 2つのトレー付 Lot.195

編集部