いまの国内アートマーケットをどう見るか
──近年の日本のアートマーケットについてお伺いできればと思います。例えばプライマリーのうち現代美術では国際的なアートフェアやメガギャラリーが到来したり、一部のギャラリーが撤退されたりしていますし、セカンダリーに属するオークションでも統合・新設等があり、大きく勢力図が変化したかと思われます。そのタイミングに新会社を設立されたことになりますが、みなさんは日本のアート業界をどのようにご覧になっていますか。
朝倉 現代美術の盛り上がりは一部あると思いますが、日本美術市場は全体として伸び悩む状況にあり、勢いを欠いている面も否めません。ただし、浮世絵は円安の影響も相まって海外での人気が高まり、評価が上昇するとともに、新たなコレクターも増加しております。いっぽうでそれ以外の日本美術というと、どうしても国内市場のみになってしまいますし、縮小傾向にあります。それをどうしたら止めることができるのか、少しでもお客さんを増やす方法を考えたいと思っています。
──後藤さんは日本美術を専門とされていますが、近年の市場の動向をどのように見ていますか。
後藤 一般に、日本美術を扱うコレクターや業者は年齢層が高いです。お茶道具にしても、お茶の先生がご高齢になり看板を下ろしていくことが多い昨今です。マーケットが無くなることはないでしょうが、今後先細りしていく危機感があります。やはりマーケットが日本に限定されていますし、顧客だった旧来の富裕層の日本美術ファンも減っているのが現実です。ただ、今回出品される北斎の肉筆画はインパクトがありますし、同じく出品作の小林一茶の直筆の『七番日記』も、俳句が国際的に認知されてきたいま、マーケットに出ることには、非常に大きな意味があると思います。 日本の文化的なもの、伝統的なものを守っていくためにも、逆輸入も含めて、もう少しマーケットを活性化させていかなければいけないと考えています。

──ジュエリーは安定した人気があるジャンルだと思いますが、ジュエリー担当の鈴木さんは現在のマーケットをどのように見ていますか。
鈴木 ジュエリーの場合、ブランドは記号性があるので、今後も若い人たちがついていくと思いますが、大切なのは若い人たちが、生活の中にアートを取り込んでくれるのか、ということですよね。若い世代の興味が細分化し、誰もが一度は美術に触れるということが少なくなってきているので「彼らが成長したときにどういったオークションを提供できるのか」というような、将来を見据えた考え方が重要と思っています。
きっかけはさておき、若い人たちにまずは注目してもらうことが大切です。例えば抹茶がブームなので、茶道具への興味の芽がないわけではない。現代の興味に美術を接続するお手伝いができればと思います。とくに下見会には足を運んでもらいたいです。
──銀座一丁目の駅から徒歩数分のアクセスの良い会場で、普段は美術館で人の頭越しに見なくてはいけない名品を、無料で、しかも間近見ることができますよね。東西ニューアートが現代美術からジュエリーまで、マルチジャンルで展開しているということも、今後の成功の鍵になりそうですね。例えば、ジュエリーに興味を持ってオークションを見たら、日本美術が気になった、といったような、間口の広さを提供する可能性を持っていると思います。西洋美術担当の工藤さんはどのようなビジョンをお持ちでしょうか。
工藤 近代の西洋美術もじつは東洋と一緒で、受容層の年齢がかなり上がってきています。興味を喚起するのは一筋縄ではいきませんが、東アジアを中心とした海外の方に興味を持っていただけたら、伸びしろはあるかなとも思います。また、日本の若い方々は、購入される際には事前にウェブで調べるなど研究されているので、今後行う公開オークションではより詳細な来歴情報を出すなど、市場をより良くしていける手がかりはあると思っています。



















