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2021.5.15

アーティゾン美術館コレクションの「コア」に迫る

開館から1年4ヶ月が経ったアーティゾン美術館(東京・京橋)の大規模コレクション展第2弾「STEPS AHEAD:Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」が好評だ。5年間の建て替え休館中に新たに収集した作品より、初公開の約100点を含む約200点を披露し、若い層も引き寄せている。拡張しつつ前進するコレクションの現在形を、本展を企画した新畑泰秀学芸課長に聞いた。

聞き手・文=永田晶子 展示風景撮影=木奥惠三 展示風景画像提供=アーティゾン美術館

アーティゾン美術館
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──ブリヂストン美術館から名称を改め、昨年1月に建物も新たにアーティゾン美術館として開館しました。開催中の「STEPS AHEAD」展は、開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」では公開しなかった新収蔵作品を一挙公開しています。反響はいかがですか。

 建物が現代的なタワービルに建て替わったので、以前からのお客様は若干戸惑っていらっしゃる部分はあるようです。前身のブリヂストン美術館は東京で一番古い近代美術館のひとつで、主に印象派と日本の近代美術を落ち着いた雰囲気の中でお見せしてきました。 そうした点は大事にしつつ、アーティゾン美術館は時代に合った、より「いま」を感じられる美術館を目指しており、とくに「STEPS AHEAD」展は開館記念展にも増して近代に加えて現代性を強調する内容になっています。新しい時代を感じられるような美術館になったのだとお客様に受け止めて頂ければありがたいですね。

STEPS AHEAD展 セクション2「キュビスム」展示風景
STEPS AHEAD展 セクション3「カンディンスキーとクレー」展示風景

──来館するお客様層に変化はありますか。

 若い方が非常に増えています。 現在、東京都内で美術展をご覧になるのは中高年層がメインになっており、ブリヂストン美術館時代は展覧会によっては大半が年配のお客様のこともありました。 ところが「STEPS AHEAD」展は、学生さんを中心に若い層が目立ち、TwitterなどのSNSを見ると若いお客様が展覧会の感想を沢山つぶやいてくださっています。3月から4月前半の平日の例を見ると、半数以上が若年層のときも多々あり、これは当館にとって大きな変化です。

 理由としてまず学生無料で、そのことが段々と知られてきた点が挙げられるでしょう。また、デザインを含め最新鋭の設備を備えた「都内にある新しい美術館」に対する関心もあるようです。さらに、日本ではあまり作品を見る機会がなかった現代作家を含む新収蔵コレクションへの反響もあるのではないかと考えています。

新畑泰秀

 例えば抽象表現主義のウィレム・デ・クーニングは知っていても、妻で画家のエレイン・デ・クーニングをご存じの方は少ないでしょう。彼女のように素晴らしい作品を残したけれど、日本では知られていない作家を紹介することに当館は大きな意義を感じています。また、マルセル・デュシャンは「現代美術の父」と言われるものの、どこででも作品を見られるわけではありません。本展では新収蔵した彼の通称「トランクの箱」等を展示していますが、予想以上にお客様から反響があります。実物を見て得られるものは非常に大きいのだと改めて実感しますね。

STEPS AHEAD展 セクション5「抽象表現主義の女性画家たちを中心に」展示風景
STEPS AHEAD展 セクション7「デュシャンとニューヨーク」展示風景

3代にわたるコレクション

──2つの展覧会は美術館を運営する石橋財団のコレクションの広がりを示すものでした。改めて収集方針を教えてください。

 1952年にブリヂストン美術館として開館した当初から、日本の近代美術と印象派及びそれ以降の西洋美術という2つの収集の柱は変わっていません。「STEPS AHEAD」展の冒頭に日本、西洋の近代美術とキュビスムの章を置いたのも、その意志の表れです。いっぽうで開館当時から、この2つの柱を起点としつつ、より新しい時代も意識していました。それゆえに20世紀以降のピカソやエコール・ド・パリの作家をコレクションに加え、現代へつながる同時代の美術も徐々に購入してきたのです。とくに西洋近代美術の展開をお見せできるコレクションは意識的に構築してきました。

STEPS AHEAD展 セクション1「藤島武二の《東洋振り》と日本、西洋の近代絵画」展示風景

 現在、石橋財団はブリヂストン創業者・石橋正二郎から3代目にあたる石橋寬が理事長と美術館館長を務めています。どの代でも2つの柱に基づく収集は続けられてきましたが、美術館の建物が生まれ変わる今回、コレクションをさらに前へ進める意志がありました。

 石橋財団はコレクション活動を中断したことはないんです。これは珍しいことだと思いますね。時期により購入数の増減はありましたが、作品収集はずっと続けてきました。例えば中心的作品であるルノワールの《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》やピカソの《腕を組んですわるサルタンバンク》は当初からあったのではなく、後から加わった作品です。建て替えのための長期休館中も、新美術館の開館を見据えつつ、目標を立てコレクションを拡充してきました。そのタクティクス(戦術)を、「STEPS AHEAD」展では14章構成でお見せしています。

ピエール=オーギュスト・ルノワール すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢 1876

 なかでも特徴的なのは日本及び西洋の抽象美術の発展をご覧いただけること。印象派の後、フォーヴやキュビスムが起こり、次いで抽象美術が始まった。これは20世紀美術の大きな転換点でした。その後、 コンセプチュアル・アートやグラフィティ・アートなどの新たな展開はありましたが、抽象は21世紀のいまもとくに平面作品において重要です。抽象美術をきちんと位置づけ、系統立てて収集するのは近代美術館の責務だと考えています。当館は抽象美術の発祥から現代に至る展開を──ひとつの美術館として「トーン」はありますが──継続的に収集し、その成果が本展です。具体的には前段階であるキュビスム、クレーやカンディンスキーによる抽象美術の起こり、戦後のフランス抽象美術と米国の抽象表現主義、さらに現代における展開を新収蔵作品を中心としてお見せしています。また、日本の戦後抽象美術を盛り上げた具体美術協会、瀧口修造と実験工房の作品もまとまった数でご紹介しています。

ヴァシリー・カンディンスキー 3本の菩提樹 1908
STEPS AHEAD展 セクション6「瀧口修造と実験工房」展示風景
元永定正 無題 1965 © Motonaga Archive Research Institution Ltd.

──セクション2の「キュビスム」では冒頭にセザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》を展示しています。

 もちろんセザンヌだけがキュビスムの起点とは言えないので、あの展示には異論もあるでしょう。ただ、セザンヌは20世紀初頭の美術の転換期における巨匠のなかの巨匠で、後世への影響は極めて大きかった。彼は1906年に亡くなりましたが、 ヨーロッパや米国、日本に彼の信奉者は数多く、そのなかにマティスやピカソもいました。彼がキュビスムやフォーヴの、ひとつの起点になったのは間違いない。前のセクション1では主に19世紀の日本、西洋の絵画をまとめて展示しているので、そこからの転換の意味もあって選択しました。本作は早い段階で石橋正二郎が入手し、数多く描かれたサント=ヴィクトワール山の作品のなかでも優れた作品として知られています。我々の広がっていくコレクションの〝起点〟を象徴するような作品でもあります。

ポール・セザンヌ サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール 1904-06頃

──収集を担う財団は石橋家が3代にわたり率いてきました。

 国公立の美術館とは大きく異なる点でしょう。初代の正二郎は青木繁や坂本繁二郎、藤島武二の作品を積極的に入手しつつ、印象派も愛して作品を集めました。正二郎の長男幹一郎は父の方針を引き継いでルノワールの「シャルパンティエ嬢」やピカソの「サルタンバンク」を収蔵するいっぽう、個人としてフランスの戦後抽象美術に関心を持ち、収集した作品群は彼の没後に財団へ遺贈されました。2008年にブリヂストン美術館が開催した「コレクションの新地平─20世紀美術の息吹」展は、 幹一郎が購入し、いまやコレクションのなかで重要な存在になったザオ・ウーキーやデュビュッフェ、フォートリエの作品を紹介しました。幹一郎の個人収集は結果的に元のコレクションを現代へつなげる役割を果たし、美術館にも変化をもたらしたのです。現在の理事長、石橋寬も父幹一郎の方針を引き継ぎつつ、ポロックをはじめ米国の抽象表現主義の作品などを加えてきました。3代にわたる連続性のなかでコレクションを拡張してきたのです。

STEPS AHEAD展 セクション8「第二次大戦後のフランスの抽象美術」展示風景

女性作家や現代美術にも注力

──先ほど「トーン」という言葉がありました。これは美術館の「個性」とも言えると思いますが、具体的にはどのような傾向ですか。

 国公立美術館の場合、館の収集方針はありますが、基本的に「まんべんなく」が根底にあるのではないでしょうか。つまり抽象美術と言っても、視覚的に美しい作品から、社会性を帯びたり、一見グロテスクに見えたりする作品まであり、収集の幅は広いことが多い。いっぽう、石橋コレクションは印象派から現代作品まで、時代や表現方法は違ってもひとつの「筋」が3代にわたり引き継がれてきたように感じます。簡潔に言うと、表現のコア部分の変革を目指した、美術として自律した作品への関心でしょうか。

 一例を挙げると、エレイン・デ・クーニングの《無題(闘牛)》は、彼女が高名な夫ウィレム・デ・クーニングから離れ、メキシコで闘牛を見た時に受けた衝撃がインスピレーションの源になっています。元々、彼女はウィレムの弟子で、厳しくシゴかれ続けて、恐らく画家として鬱屈したものを抱えながら別居して、この絵を描いたわけです。そうした背景を知ると、彼女が夫から自由になりハッちゃけた感が伝わってきて興味深い(笑)。でも、そんな事情や抽象表現主義は知らなくても、視覚的に非常に美しく迫力がある。若い方が盛んに写真を撮るのも、直感的に面白さがわかるからでしょう。恒久的に保管していく以上、美術史的価値は無論必要ですが、この絵のように様々な要素をそぎ落としても人を引き付ける魅力に富んだ作品を収集するように心がけています。

エレイン・デ・クーニング 無題(闘牛) 1959 ©Elaine de Kooning Trust

​──新収蔵作品は作家の転換期を示すものや人気がある典型作が目を引きました。いま世界のアート市場は〝バブル〟と呼ばれるほど活況を呈し、有名作家の作品は収奪戦のような状況です。どのようにして作品を収集していますか。

 いま、日本は景気が悪く情報があまり入ってきませんから、スタッフは情報収集に必死です。具体的な方法としては国内外のオークション情報、画商に聞く、現存作家の調査、他のコレクターに所蔵品を見せて頂く──など様々です。常にアンテナを張り足を動かし目を動かして情報を集め、収集を続けています。これまでの経験から言えるのは、ひとつ作品を入手するとつながる作品の情報が入りやすくなります。今回の長期休館中に印象派の女性画家の作品を5点ほど収蔵したんですが、元々作品数が少ないので探し始めた当初は情報がほとんどありませんでした。まずメアリー・カサットの作品を入手でき、次にエヴァ・ゴンザレスを探して方々に声をかけると作品がやっと見つかり、そこから糸口ができて他の作品も出てきました。最終的に貴重な作品群を収蔵でき、ベルト・モリゾの《バルコニーの女と子ども》は彼女の代表作のひとつと言えるでしょう。日本の具体や実験工房の作家も意外に当時の作品は少なく、収集に苦労しました。

メアリー・カサット 日光浴(浴後) 1901
エヴァ・ゴンザレス 眠り 1877-78頃
ベルト・モリゾ バルコニーの女と子ども 1872

 集まった作品情報は学芸員が議論を重ね、理事長を中心に財団内部での繰り返しの議論と外部専門家による会議など幾つかの段階を経て最終的に財団が収集するかを決定します。総合的に議論し、当館コレクションにふさわしい広がりやまとまりが持てるかを含めて判断が行われています。大きな収集方針として古代美術、印象派、日本の近代絵画、20世紀美術などを掲げていますが、石橋寬理事長・館長を中心に毎年詳細な戦略が立てられ、それを元にベストの作品を探します。

──「STEPS AHEAD」展は印象派や抽象表現主義、実験工房の福島秀子、具体の田中敦子と、女性美術家の作品が目を引きます。意識的に収集しているのですか。

 とくにフェミニズムを打ち出すつもりはありませんが、女性美術家が不当に軽視されてきた部分があるのは事実であり、正当に評価していく必要があると考えます。幸い、副館長の笠原美智子はその専門家です。近年、抽象表現主義の画家のジョアン・ミッチェルやリー・クラズナー、エレイン・デ・クーニングは急に評価が高まり、実際に作品は大変優れている。現実的問題として、抽象表現主義の絵画作品は価格が高騰し、手に入れづらいなかで、女性画家の作品は比較的まだ市場にあります。田中敦子はすでに評価が高く、福島秀子も注目を集めており、今後さらに再評価は進むでしょう。

STEPS AHEAD展 セクション9「具体の絵画」展示風景
STEPS AHEAD展 セクション6「瀧口修造と実験工房」展示風景

──日本近代洋画の新収蔵作品では、冒頭に展示された藤島武二《東洋振り》の典雅な美しさが印象に残りました。

 このように素晴らしい作品が入ってくるのも、元々コレクションに重要文化財に指定された藤島作品があるからでしょう。まさに「作品が作品を呼ぶ」と実感しますね。

藤島武二 東洋振り 1924

──今回コレクションに芸術家の肖像写真およびアボリジナル・アートを中心とするオーストラリア美術を加えたのはなぜですか。いままでにない収集分野だと思いますが。

 他の新収蔵作品がこれまでのコレクションの「拡張」とすると、この2つはかなり踏み込んだ収集となりました。オーストラリア美術はブリヂストン美術館時代の2006年に「プリズム:オーストラリア現代美術」展を開催しました。石橋寬理事長・館長が先導し、西洋と日本以外のいわば第三極の美術をご紹介する狙いがありました。その後、徐々に作品を収集してきて、現在はオーストラリア美術が専門の学芸員も配置しています。とくに先住民によるアボリジナル・アートは、独自の文化を背景に西洋とも東洋とも異なる大変ユニークな視覚表現が生まれており、「STEPS AHEAD」展では作品をまとめてヨーロッパと日本の抽象美術の近くに展示しました。抽象表現のレゾナンス(共鳴)と、世界的な広がりを感じていただけるのではないでしょうか。

STEPS AHEAD展 セクション10「オーストラリア美術―アボリジナル・アート」展示風景

 写真はこれまでコレクションにほとんどありませんでした。どうするべきか考えるなかで、700点以上からなる19世紀末の芸術家肖像写真のコレクションに出会い、面白いと思いました。モネやドガ、サント=ヴィクトワール山を背にしたセザンヌら重要な芸術家が網羅され、資料として重要であると同時に芸術的価値もある。その両面を活かすことができると考え、休館中に収集に踏み切りました。その後、気になって日本の現代美術の現場を記録してきた写真家の安齊重男さんにお聞きしたら、きちんとした形で美術館に作品が収蔵されたことはないと。安齊さんは1970年代から「もの派」をはじめ、世界中の美術家や芸術祭を撮影してこられ、肖像写真コレクションともつながります。安齊さんには手元にあったヴィンテージ写真を中心に、自選した約200点をコレクションに収めて頂きました。昨年亡くなられて、大変残念です。

STEPS AHEAD展「芸術家の肖像写真コレクション」展示風景
エミール・ベルナール ポール・セザンヌ 1904もしくは1905

──2019年に79歳で亡くなった田中信太郎の立体・平面作品をまとめて収蔵し、今回デザイナーの倉俣史朗の家具と共に展示しています。

 アーティゾン美術館は開館以来、6階入口に倉俣史朗の《ガラスのベンチ》と田中信太郎の立体作品《ソノトキ音楽ガキコエハジメタ》を常設展示しています。いずれも旧ブリヂストン本社ビルのロビーにあった作品で、ビル建て替えの際に財団コレクションとなりました。田中さんの表現の幅は広く、とくに立体が有名ですが、1980年代後半に大病から復帰後に重点的に制作した抽象絵画も素晴らしい。倉俣さんは91年に亡くなりましたが、田中さんと大変親しく、でも一緒に作品を展示する機会はこれまで殆どなかったようです。今回は一室を2人に充て、昨年末に収集した田中さんの作品群と、倉俣さんが旧ビルのエントランス・ホールためにデザインした椅子やテーブルなどを置きました。デザインと現代美術、2人の巨匠の共演・共鳴が味わえる貴重な場になったと思います。

左から倉俣史朗《ガラスのベンチ》(1986)、田中信太郎《ソノトキ音楽ガキコエハジメタ》(1986)
STEPS AHEAD展 セクション4「倉俣史朗と田中信太郎」展示風景

──現代美術についてはどうお考えですか。

 ブリヂストン美術館時代に現代を扱わなかったわけではないのですが、現代美術に真っ正面から取り組むのはアーティゾン美術館になってからですね。新企画「ジャム・セッション」は笠原副館長の発案で、財団コレクションからインスピレーションを得たり、関連性があったりする作品を現代美術家に発表して頂きます。昨年開催した鴻池朋子さんによる第1回は大変好評で、その頃から若いお客様が増えてきた感があります。10月に始まる第2回は、森村泰昌さんが青木繁《海の幸》(1904)にインスピレーションを得た作品を制作するなど、青木への熱い想いを新たな作品シリーズで発表します。

青木繁 海の幸 1904

 いま私たちが非常に意識しているのは、アーティゾン美術館が「何かが生まれる場」になってほしいということなんですね。ブリヂストン美術館は1952年の開館のときより長く、東京で本物の印象派作品が鑑賞できる希少な場所でした。多くの美術家や創作に関わる人たちが若いときから通い、制作のモチベーションを得たと言います。アーティゾン美術館も新旧の創造性がぶつかり合い、新しいものが生まれる場になりうるし、それを具体化したひとつが「ジャム・セッション」なのです。

コロナ禍における展覧会のありかたとは

──新型コロナウイルス感染症拡大により、海外からの作品輸送や混雑が伴う特別展の開催は厳しい事態が続いています。どう受け止めていますか。

 今後、日本の美術館の展覧会活動はますます自館のコレクションが肝になると考えています。これまで多くの美術館が作品を多数所蔵しているにも関わらず、専ら特別展に力を注ぎ、コレクションを活かしきっていると言い難い状況にあったのではないでしょうか。アーティゾン美術館も展示室が大きくなったゆえ、特別展にも力を入れます。いっぽうで当館はとりわけコレクションを大事にしてきた自負があります。「コレクションで勝負できる美術館」の面を、引き続き大切にしたいし、これから収集していく作品も順次お見せしたいと思います。

新畑泰秀

 いっぽうで近年、日本と世界の美術を巡る状況はガラリと変わり、その変化を無視することも出来ません。お客様が期待する展覧会を行う重要性は一層増しており、それに応えて今年10月からオルセー美術館・オランジュリー美術館との共同企画で特別展「クロード・モネ ─風景への問いかけ」を開催します。オルセー美術館はモネの重要作品を数多く所蔵し、当館にも質が高い作品があるので、併せて展示します。特別展の展開も、コレクションとのつながりは常に意識しています。

 創設者の石橋正二郎は戦後に米国を訪れ、都心にあって気軽に立ち寄れるニューヨーク近代美術館(MoMA)に感銘を受けて、ここ京橋にブリヂストン美術館を開設しました。彼が感じた現代生活における美術の重要性を、これからも展示や作品収集、普及活動を通じて広めていけたらと思います。