──多くの人々にとって、ジョン・ガリアーノという人物は、大変興味深い存在です。革命的なファッションデザイナーでありながら、差別発言によってキャンセルもされた。そんなガリアーノを題材に映画を撮ろうと思った理由を教えてください。
マクドナルド 社会的な規範において画一的な評価がされてしまった人物に惹かれるというのが大きな理由です。以前にも『モーリタニアン 黒塗りの記録』という、911同時多発テロ後にテロリストとしての疑惑をかけられた実在の人物を題材にしたフィクションを撮りましたが、社会的に「こういう人物だ」と決めつけられて裁かれてしまう人は多い。でも、じつはその裏には色々なことがあるのではないか、という問いがいつもあり、また惹かれるのも事実です。
同時に、この映画はキャンセルカルチャーについての作品でもあります。いまや世界中で、キャンセルカルチャーが危険なかたちで流行していると私には思えます。改めてキャンセルカルチャーについて考える作品をつくりたかったのです。
──キャンセルカルチャーのさなかにいる当人は、当然メディアを警戒しているでしょうし、自分の心を外に出してもらうハードルは非常に高いですよね。対象の心を開くために監督が心がけていることは何でしょうか。