2017.8.1

Airbnb×美術手帖
豊かな自然の中で、アート、食、人に癒される旅。

世界191か国以上、累計1.8億人以上に利用されているホームシェアリングサービス「Airbnb」(エアビーアンドビー)。日本でも数多くのユーザーが利用しているこのサービスを使って、今が旬の芸術祭・国際展を巡ってみるのはいかがだろうか? Airbnbと美術手帖が新しいアート旅のかたちを提案する。

文=佐藤恵美 撮影=柏田テツヲ

ジェームズ・タップスコット Arc ZERO
前へ
次へ

|アートも宿も、満足したい。

 ビエンナーレ、トリエンナーレ、芸術祭、と全国でさまざまなアートフェスティバルが開かれている昨今。2017年も北は札幌から南は種子島まで、大小の芸術祭が目白押しだ。芸術祭といえば、人里離れた自然豊かな場所で開かれることも多いぶん、泊まれる宿が限られる場合も。でも地元のお家に泊まれるAirbnbなら、アート巡りはもちろん滞在自体も楽しめる。そこで生活する人に出会い、地の食材を使った料理を味わい、ユニークな旅を演出できるだろう。

 今回の旅先は東京から電車で約4時間、長野県大町市で7月30日まで開催された「北アルプス国際芸術祭」だ。旅に出たのは、ファッションデザイナーの中里周子さん、モデルの酒井いぶきさん、グラフィックデザイナーの米山菜津子さん。それぞれにクリエイティブなバックグラウンドを持ち、これまでも仕事やプライベートで一緒に過ごす時間が多かった3人は、元スキー旅館だったリスティングを予約した。東京から2年前に移住した夫婦が始めた「ochicochi village」は、木造民家の良さを残したデザイン性の高い空間らしい。海外渡航も多い3人は、日本では初めてのAirbnbの利用に期待を膨らませ、旅はスタートした。

目 信濃大町実景舎

|緑と水が豊富な環境で、アートを楽しむ。

 「北アルプス国際芸術祭」が開かれている長野県大町市は、3000メートルの峰々が連なる北アルプス山麓の街。雪解け水が流れ込み、澄んだ空気と青々とした緑に囲まれたこの場所に、国内外から36組のアーティストの作品が集う。

 1日目はあいにくの雨。久しぶりに集まった3人は、どんよりとした空にも屈しない明るさで旅を盛り上げる。それぞれの作品は車で数分、と近接する距離にあるので回りやすい。まずは木崎湖周辺の作品を見て回った。「めちゃ透明!」と木崎湖を見て思わず声を上げる3人。

五十嵐靖晃 雲結い(くもゆい)
杉原信幸 アルプスの湖舟

|ランチは石窯で焼いた天然酵母のピザを。

 ランチは、ホストが教えてくれた屋外のテラスで石窯ピザが食べられるベーカリー、パン・ド・カンパーニュへ。天然酵母を使用し、オーナー手づくりの石窯で焼くピザ生地は、外はパリパリで中はモチモチ。「おいし〜い!」と3人とも思わずにこり。

 ピザとコーヒーでお腹が満たされたら、午後も再びアート巡り。大町温泉郷にある森林劇場を舞台にした作品や、パワースポットとも称される仏崎観音寺近くの作品などを鑑賞。北アルプス国際芸術祭のテーマでもある「水、木、土、空。」にまつわる作品世界を堪能した。

屋外テラスで石窯ピザが食べられるベーカリーでランチ
マーリア・ヴィルッカラの《ACT》。酒井いぶきさん「水がテーマの作品が多いし、雨も降ってるし、全身で水を感じる!」

|新鮮な野菜をたっぷり使って、ホストさんと一緒に料理。

 ひとしきり遊んだら、あっという間に夕方に。産地直売所に寄って、地元の新鮮な野菜を手に入れochicochi villageにチェックイン。ホストの林さん一家に温かく迎えられ、早速料理を開始。すると、ほどなくして奥さんがボールいっぱいのベビーリーフを持ってキッチンへ。「今、庭で採ってきた無農薬野菜なんです」と林さん。手づくりのドレッシングでサラダを差し入れてくれた。この日、芸術祭を見にきたという別のゲストとも一緒に信州ワインで乾杯。野菜たっぷりの料理を囲み、大人数での宴になった。

中里周子さん「器や内装など細部にこだわりがあって、ホストの方々も温かく、素敵なお家でした!」
中里周子さん「Airbnbで泊まると、そこで生活している人に会える。そういう場所って温かみを感じていいですね」

|未来のオープンカフェで朝ごはん。

 夜中まで女子トークで盛り上がったにもかかわらず、翌朝早起きして朝ごはんをつくる3人。2日目は晴れ間も見えて、半屋外のテラスでモーニング。林さんご夫妻は、近々この場所でカフェをオープンさせたい、と話す。「ochicochi village」とは「あちらこちら」や「現在・未来」という意味の古語「をちこち」が由来だそう。「それらの思いを込めて、古い廃材を利用して自らリノベーションしたり、キッチンには民芸の器を用意したりしています。海外からのゲストが多く、ときにはアーティストが1週間ほど滞在して静かな自然環境で創作活動を行うこともあります。そういったゲストとの交流の影響もあり、最近はリノベーション活動がさらに楽しくなりました。」と林さん。

宿の庭にある半屋外テラスで朝食
米山菜津子さん「民家のしつらえに山のモチーフが多かった。信州の方々の山への誇りを感じました」

|地元の人と出会い、土地の味を知る。

 朝食後、仕事で先に出なくてはならない酒井さんを見送り、2日目のアート散策へ。作品のある場所を目指しながら、鷹狩山展望台から北アルプス山系を望んだり、山麓の町では地元ボランティアの方々によるおもてなしを受けたり。「ぜひ食べてって!」という笑顔に誘われ、タケノコ汁にそば粉のおやき、すもものジャム、麦茶やそば茶などの特産品をほおばる。地元に住む人と出会い、地産の食材で土地を感じる、充実の2日間だった。

 「芸術祭では作品を見る体験と同じように、どこに泊まるのかも重要だと思いました」という中里さん。今回のようなアートフェスティバルはもちろん、お祭りなど各地のイベントに出かけるときも、Airbnbは旅を彩ってくれそうだ。

リー・クーチェ 風のはじまり
フェリーチェ・ヴァリーニの《集落のための楕円》。
中里周子さん「Airbnbで泊まると、そこで生活している人に会える。そういう場所って温かみを感じていいですね」
ニコライ・ポリスキー Bamboo Waves

Q:Airbnbを使った感想は?

中里さん:布団がとても気持ちよくて、本当に快眠でした(笑)。生活感の残る雰囲気で、整頓された宿よりも、くつろげるかもしれません。

酒井さん:ただ部屋が空いているから貸すというイメージでしたが、全然違った。「旅に来た!」という感じ! ホストさんと関われるのも楽しかったです。

米山さん:旅行先でスーパーに行くのが好きなんですが、Airbnbだと地元で採れた野菜や魚を買って料理できるのが嬉しいですね。

Q:Airbnbを使ってどんな旅に出てみたい?

中里さん:ゆっくりできるので、プライベートな旅行でまた使ってみたいです。あとは、滞在しながら制作するのも良さそう!

酒井さん:こんな素敵な物件があるなら、先に泊まりたい物件を見つけて、そこから旅を考えてもいいかも、と思いました。

米山さん:みんなでごはんをつくって食べて、寝る前に部屋でおしゃべりして、と合宿感が楽しかったので、またグループの旅行で使ってみたいです。

Q:この旅で最も印象に残ったことは?

中里さん:お風呂や部屋の中で、カエルの声や雨風の音が聞こえたこと。聴覚も研ぎ澄まされてリラックスできました。

酒井さん:雨だったけれど、この天気だからこそ見られた作品の風景が印象的でした。

米山さん:ホストさんの育てた野菜が、味が濃くて本当においしかったです。旬の野菜が東京とは違っていたのも魅力でした。

■おすすめスポット

パン・ド・カンパーニュ

素材にこだわるベーカリー。パン生地は天然酵母で全粒粉を混ぜることで香ばしく焼きあがる。家具工房も備え、ピザ窯のほか、窯のある小屋もセルフビルドだそう。

住所:長野県大町市平2439-43

TEL:0261-23-3541

鷹狩山展望台

北アルプスの山々が一望できる鷹狩山山頂の展望台。雪化粧が残り、朝焼けに染まる連山は絶景。「恋人の聖地」に認定されたハートのモニュメントも。

住所:長野県大町市八坂8583-2

わちがい

郷土料理や地酒を楽しめる。地域の特産品と海産物を使った「塩の道お祭りご膳」も。建物は明治時代から残る庄屋を改修し、くつろげる空間となっている。人気店なので予約がおすすめ。

住所:長野県大町市上仲町4084

TEL:0261-23-7363