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INSIGHT - 2020.3.15

男性性の実態を紐解くグレイソン・ペリーのジェンダー論から長谷川愛によるアイデア実践の手引きまで。4月号新着ブックリスト(2)

新着のアート&カルチャー本の中から毎月、注目の図録やエッセイ、写真集など、様々な書籍を取り上げる、雑誌『美術手帖』の「BOOK」コーナー。グレイソン・ペリーが固定観念としての男性性に疑問を投げかける『男らしさの終焉』や、長谷川愛が自身の作品が生まれた経緯からアイデアの実践方法を導き出す『20XX年の革命家になるには─スペキュラティヴ・デザインの授業』など、注目の新刊を3冊ずつ2回にわたり紹介する。

評=中島水緒(美術批評)+ 岡俊一郎(美術史研究)

『男らしさの終焉』

ジェンダーの議論が扱うのはフェミニズムばかりではない。近年、注目を集めている男性学もまた、伝統的・慣習的な性役割を考え、とらえ直すための主要な分野だ。本書の著者グレイソン・ペリーは、ターナー賞の受賞歴もある「トランスヴェスタイト(異性装)」のアーティスト。時に権力と結びつき、時に男性自身を固定観念で縛り上げる男性性とはいったいなんなのか、自身の体験や風刺も交えてその実態をひもとく。硬直したジェンダー観を解放し、自己/他者と性のありようを見つめるヒントにあふれた1冊。(中島)

『男らしさの終焉』
グレイソン・ペリー=著
小磯洋光=訳
フィルムアート社|2000円+税

 

『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』

1990年代に一世を風靡した「女の子写真」ブーム。現代日本写真史を語るうえで外せない潮流だが、言説をリードしたのは主に男性論者であった事実を見過ごすことはできない。本書はブームの第一人者として位置づけられてきた長島有里枝が、その違和感に向き合うべく社会人入学した大学での研究を経て執筆した論文の書籍化。当時のメディアが長島やヒロミックスといった写真家をいかに語ってきたか、言説構築の偏りを検証するほか、ヘアヌード写真の流行、「ガーリーフォト」の動向と合わせて批判的に読み直す。(中島)

『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』
長島有里枝=著
大福書林|3300円+税

 

『20XX年の革命家になるには─スペキュラティヴ・デザインの授業』

著者自身の空想をもとにした作品やそれらが生まれた経緯を紹介しつつ、読者が自らのアイデアをかたちにするための方法を示す実践的なハンドブック。近未来的な設定を導入することで現在を批判的にとらえなおすデザイン実践の歴史的背景や事例、アジア各国での展開状況、研究者との対談、読書案内など様々なアイデアの種が豊富な視覚的資料とともに詰め込まれている。ワークシートやカードなど、作業を通して自分の考えを現実世界に実装するためのツールも付属。アイデアに行き詰っている読者には一見の価値がある。(岡)

『20XX年の革命家になるには─スペキュラティヴ・デザインの授業』
長谷川愛=著
ビー・エヌ・エヌ新社 |3200円+税

(『美術手帖』2020年4月号「BOOK」より)