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2019.12.1

マシュー・バーニーからポンピドゥー・センターのポップアップまで。この冬、海外で見るべき展覧会(アジア編)

年末年始は海外の美術館を訪れるチャンス。この冬、海外で開催されている展覧会のなかから、編集部が注目する展覧会を地域ごとにピックアップしてお届けする。

 

レン・ハン Untitled 2011 (「SPECTROSYNTHESIS II : Exposure of Tolerance – LGBTQ in Southeast Asia」出品作品)
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「Matthew Barney: Redoubt」 (UCCA Beijing 尤伦斯当代芸術中心、北京)

マシュー・バーニー Redoubt (Cosmic Hunt) 2018

 サンフランシスコ出身のマシュー・バーニーは、アメリカを代表する現代美術家。このバーニーの、中国初となる個展「Redoubt」がUCCAで開催されている。本展では、2時間におよぶ映像作品《Redoubt》(2018)や銅板彫刻などの2016〜19年に制作された約60点の作品を展示。

 ギリシャ神話をもとにした《Redoubt》はバーニーが大学入学までの幼少期を過ごしたアイダホ州の山岳地帯を舞台に、自然と人間の関係性を問う作品。また彫刻のひとつはUCCAの大ホールに合わせて制作されたもので、本展が初公開となる。会期終了後はロンドンのヘイワード・ギャラリーへ巡回予定。

会期:2019年9月28日〜2020年1月12日
会場:UCCA Beijing 尤伦斯当代芸術中心
住所:798 Art District, No.4 Jiuxianqiao Road, Chaoyang District, Beijing 
電話番号:+86-10-5780-0200
開館時間:10:00〜19:00

 

2019 Asian Art Biennial 「The Strangers from beyond the Mountains and the Seas」(国立台湾美術館、台湾)

「The Strangers from beyond the Mountains and the Seas」展示風景より

 本ビエンナーレのタイトルにある「the strangers」は日本古代の言葉「賓(まれびと)」から着想を得たもの。民俗学者・折口信夫によれば、賓とは贈り物を持って遠くからやって来る超自然的存在のこと。賓という言葉を拡大解釈した"stranger"を用いることで、人々を取り巻く多数の他者"others"をも指し示している。その意味は、移民、マイノリティー、入植者、スパイ、反逆者など多岐にわたる。 

 ビエンナーレには、李禹煥(リー・ウーファン)、シルバ・グプタ、ミン・ウォン、田村友一郎など多様なバックグラウンドを持つ作家が参加。映像作品、インスタレーション、絵画などの鑑賞を通じて"strangers"と出会い、鑑賞者は自分自身の輪郭、そして社会や人間の種の境界に向き合うこととなるかもしれない。

会期:2019年10月5日〜2020年2月9日
会場:国立台湾美術館
住所:Lobby, Gallery Street, Gallery 102-108, Gallery 202-205, National Taiwan Museum of Fine Arts
電話番号:+852 25280792
開館時間:9:00〜17:00(土日は〜18:00)
休館日:月

 

「Anish Kapoor」(CAFA 中央美術学院美術館, 大廟(タイビョウ)美術館、北京)

「Anish Karpoor」 展示風景より

 現代彫刻家アニッシュ・カプーアの中国の美術館での初個展が開催されている。インド出身でイギリス国籍を持つカプーアの作品は、古代インド哲学をルーツとし、仏教や道教、そして西洋の芸術観や精神までをも融合させている。ミステリアスでパワフルな彫刻が放つメッセージは国境や大陸、さらには文化やイデオロギーをも超え、世界中で注目を集める。

 本展は、磯崎新によってデザインされた中央美術学院美術館と、天安門の内側、紫禁城午門の外側にある太廟美術館で行われる。中央美術学院美術館ではカプーアの過去35年を代表する作品が作家自身によるインスタレーションとともに展示。大廟美術館では幾何学的で感覚的な彫刻が展示されている。

会期:2019年10月25日〜2020年1月1日
会場:中央美術学院美術館、大廟美術館
住所:8 Huajiadi S St, Wang Jing, Chaoyang, Beijing
電話番号:+86-10-64771114
開館時間:9:30〜17:30
休館日:月
料金:一般 15人民元 / 学生(120cm以上)10人民元 /  学生(120cm以下)、60歳以上 無料

 

Convex / Concave: Belgian Contemporary Art(上海油罐芸術中心、上海)

「Convex / Concave: Belgian Contemporary Art」展示風景より

 中国最大規模のベルギー現代作家のグループ展が、巨大な燃油タンクを美術館にした上海油罐芸術中心で行われている。本展は、ブリュッセルにある現代美術館ウィールズ(Wiels)とのコラボレーション。外向性と内向性を意図する凸と凹(Convex / Concave)が主題となった本展。壮大な哲学や抽象的で概念的なモデルに依拠するのではなく、より知覚しやすい日常世界への観察によって生み出された作品に触れられる。

 本展にはフランシス・アリス、ハロルド・アンカート、ミヒャエル・ボレマンス、ジャックス・シャルリエなどベルギー出身の注目アーティストたちの作品が集結。

会期:2019年10月30日〜2020年1月12日
会場:上海油罐芸術中心
住所:2380 Longteng Avenue, Shanghai
電話番号:+86 021 6950 0005
開館時間:10:00〜18:00
休館日:月

 

Cyprien Gaillard: Ocean II Ocean(上海油罐芸術中心、上海)

「Cyprien Gaillard: Ocean II Ocean」展示風景より

 同じく上海油罐美術館では、パリ出身でベルリン在住の現代美術家シプリアン・ガイヤールの中国初の美術館での展覧会も開催されている。新作を展示するにあたって、作家自身が同美術館を繰り返し訪れフィールド調査を入念に行ったという。最新作《Ocean II Ocean》は、元々燃油貯蔵ビルであった同美術館の巨大な壁に作品を投影し、建物を強調する構造となっている。開発を描いた映像が元燃油タンクに映し出されることでふたつの概念が接続され、展示空間自体の歴史的背景までもが浮き上がってくる。

 2019年の作家のヴェネチア・ビエンナーレ「May You Live in Interesting Times」で出展された作品も中国で初めて展示。人類の歴史、文明社会、そしてグローバルな問題にアプローチするインスピレーションを与える展覧会だ。

会期:2019年11月7日〜2020年1月12日
会場:上海油罐芸術中心 第3タンク
住所:2380 Longteng Avenue, Shanghai
電話番号:+86 021 6950 0005
開館時間:10:00〜18:00
休館日:月

 

Passing Through Architecture: The 10 Years of Gordon Matta-Clark(上海当代芸術博物館、上海)

「Passing Through Architecture: The 10 Years of Gordon Matta-Clark」展示風景より

 35歳で夭折した美術家ゴードン・マッタ=クラーク(1943~1978)の大回顧展が上海の現代美術館、上海当代芸術博物館で開催されている。

 中国初の大規模展である本展は、1968年から1978年の10年にわたって制作された400のドローイング、写真、映像、そしてアーカイヴを展示する。分野横断的なマッタ=クラークの思想やアヴァンギャルドな作品をたどることができる。

会期:2019年11月7日〜2020年2月16日
会場:上海当代芸術館
住所: Gate 7, People's Park, 231 West Nanjing Road, Shanghai,
電話番号:+86 021-6327-9900
開館時間:11:00〜19:00
休館日:月

 

SPECTROSYNTHESIS II : Exposure of Tolerance – LGBTQ in Southeast Asia(バンコク・アート&カルチャー・センター、バンコク)

レン・ハン Untitled 2011

 東南アジアにおけるLGBTQのクリエイティブ史を深掘りした作品がフィーチャーされている本展では、社会の枠組みによって確立される価値基準を疑問視し、変化してきた境界に目を向けるアーティストたちを紹介する。

 2017年に逝去した写真家レン・ハンや、ベトナム出身のディン・Q・レ、香港出身のジェス・ファン、マレーシア出身のアンネ・サマット、インド出身のバルビア・クリシャンなど、東南アジア出身作家を中心にインド、中国などを背景に持つ作家も含まれる。ディン・Q・レは、伝統的な草筵織りの技術にインスパイアされた作家独自の写真織りの2作品を含めた3つの作品を発表する。多様な情報源から写真を利用した作品は、視覚的検閲が形作るナショナルアイデンティティへの偏った受け取り方や認識を表現するのと同時に、作家の内なる感情をも描く。 

会期:2019年11月23日〜2020年3月1日
会場:バンコク・アート&カルチャー・センター
住所:Main Gallery, 7th – 8th floor, Bangkok Art and Culture Centre (BACC), 939 Rama 1 Road, Wangmai, Pathumwan, Bangkok
電話番号:+852 25280792
開館時間:10:00〜21:00
休館日:月
料金:無料

THE SHAPE OF TIME(ウエストバンド・ミュージアム・プロジェクト、上海)

「THE SHAPE OF TIME」展示風景より

 フランスを代表する近現代美術館のポンピドゥー・センターのポップ・アップが上海の再開発地区であるウェストバンド地区に期間限定で開館した。開館記念展である本展では10万点にもおよぶコレクションの中から約100点を紹介している。

 2部構成のうち1部では、パウル・クレーやコンスタンティン・ブランクーシ、アルベルト・ジャコメッティ、パブロ・ピカソなどの20世紀初頭の作品から、20世紀半ばまでの作家を紹介。2部では、ヘスス・ラファエル・ソト、クリスチャン・ボルタンスキー、ダニエル・ビュレンなどの現代作家の70年代以降の作品を展示している。東西アートの文化交流地点としてオープンしたポップアップの本展は見逃せない。

会期:2019年11月5日〜2021年5月9日
住所:2600 Longteng Avenue, Xuhui District, Shanghai 
開館時間(展示室):10:00〜17:00 ※入館は16:00まで 開館時間(展示室以外):10:00〜22:00
休館日:月(展示室のみ) 
料金(平日):コレクション展のみ 70人民元 / テーマ展のみ 90人民元 / 全展示 150人民元
料金(週末・祝日):コレクション展のみ 80人民元 / テーマ展のみ 100人民元 / 全展示 170人民元