EXHIBITIONS

Drawings – Plurality

PARCO MUSEUM TOKYO
2022.01.21 - 02.07
 鈴木ヒラク、村山悟郎、やんツーによる展覧会「Drawings – Plurality」がPARCO MUSEUM TOKYOで開催されている。「ドローイングとは何か?」という根源的な問いをテーマに、3人のアーティストを紹介する。

「Draw(引っ張る)」という動詞は、「Lines(線)」について探求する社会人類学者ティム・インゴルドが指摘したように、もともと「糸の操作」と「軌跡の刻印」といった手の行為を指す。先史時代の洞窟壁画から現代のアートに至るまで、人類にとって新たに線を生成したり、線の軌跡を見いだすというドローイング行為は、普遍的かつ多様なものとして連綿と続いている。とくに2000年代以降の西欧ではドローイングの再定義・再評価が進み、たんに下描きや紙への素描という意味を超え、それ自体がコンテンポラリー・ドローイングというアートのジャンルとして成熟しつつある。

 アメリカのThe Drawing CenterやイギリスのDrawing Roomといった専門の美術館の活動が活発化し、各地で展覧会の開催や様々な書籍の刊行、そしてドローイングに特化したアートフェアも数多く行われているいっぽう、日本のシーンは、いまだそうした欧米の動向との連続性が乏しいとも言える。しかし、東洋に根付く自然界の線に対する感受性や、ハイアートとストリートの混交などの文化的背景をベースとして、新たなドローイングを表現するアーティストが増えてきている現状も、またある。

 今回、このような時代状況も踏まえ、現代の日本においてラディカルなアプローチでドローイングの可能性に向き合う3人のアーティストを紹介する。

 宇宙の万物が現す線から路上の記号までを解体・再接続し、新たな言語としてのドローイングを探究する鈴木ヒラク、触覚的な線描を用いながら有機体の自己組織化を創発させる村山悟郎、そしてメディア・機械・装置がつくり出す線描に人が何を見出すのか軽妙に問うやんツー。3人のドローイングには、必ずしも人間を中心に据えない線の広がりがあり、人類の外側にある物質や生命、そして機械の線もまた、それぞれの創造とのあいだに結び目をつくっている。

  3人の表現に見るように、物質・生命・機械が絶妙なバランスで相互に交わる領域において、人はどのような差異や芸術を見出すのか。本展では、「Plurality(複数)」のドローイングに相互参照し合う線を引きながら、それぞれの実践をひも解く。