EXHIBITIONS

宇田川直寛「庭の気がかり」

2021.11.20 - 12.19, 2022.01.07 - 01.09
 宇田川直寛は、深遠な思考と諧謔がない交ぜになった、独特な話法をもつ注目の作家。その個展「庭の気がかり」がSprout Curationで開催されている。

 宇田川は1981年神奈川生まれ、2004年中央⼤学法学部卒業。主に写真を用いて制作。制作行為のなかでつくることそのものをゲーム化し、「どのようにしたら作品をつくったことになるのか」という謎解きを行う。主な受賞歴に、15年「Foam Talent 2015」、13年キヤノン写真新世紀佳作(佐内正史選)、第8回写真「1_WALL」ファイナリスト。

 本展では、食卓の一部を思わせるトーストやコーヒーカップの写真を壁に貼付した作品や、ひもが写真から飛び出したような2枚1組の作品などで構成されている。

 アンリミテッドな写真表現を武器とする宇田川は、若い頃から影響を受け続けているというヴィトゲンシュタインなどの哲学からある種の問いを「なぞなぞ」として抽出し、それに対し「正しく間違える」という応答を何度も繰り返すことで、そこから発生するエントロピーを作品として提示してきた。

 例えば、「後ろ歩き問題」というシリーズは、ロジェ・カイヨワの『遊びと人間』の訳者解説にある「過去を予見するしかない」というフレーズから始動し、その延長上である本展は、フランツ・カフカの『家父の気がかり』を受け「庭の気がかり」というタイトルが付けられた。

 純粋な風景写真はいかにして可能か、風景写真に不可避に出現する対象を消し去り、背景だけを純粋に成立させること、また純粋な静物を背景から切り離すことは可能か。家族と過ごす庭でのひとときから、また新しい「なぞなぞ」が生まれると言う。