EXHIBITIONS

永田康祐「Equilibres」

2021.10.02 - 11.07

永田康祐 新作 タイトル未定 2021

永田康祐 新作 タイトル未定 2021

永田康祐 Purée 2020

 ANOMALYでは、永田康祐の個展「Equilibres」を開催。本展は、元映画館(東日暮里)での個展「Eating Body」と連動しており、元映画館では映像作品《Translation Zone》(2019)と《Purée》(2021)の上映に加えて作家自身がつくる料理の提供、ANOMALYでは新作の立体作品を中心に発表する。

 永田は1990年愛知県生まれ。現在、神奈川県を拠点に活動。社会制度やメディア技術、知覚システムといった人間が物事を認識する基礎となっている要素に着目し、あるものをほかのものから区別するプロセスに伴う曖昧さについて扱った作品を制作している。

 本展のタイトル「Equilibres」は、スイスのアーティストデュオ、ペーター・フィッシュリ・アンド・ダヴィッド・ヴァイスが、1984〜86年にかけて制作した同名作品から引用したもの。永田が自身の写真作品《Equilibres》を参照して3Dモデルを制作し、3Dプリントした彫刻作品を展示する。

《Equilibres》(仏語で「バランス」の意味)は、日用品などスタジオにあるものを組み合わせて制作した立体物を写真に収めたもので、永田はこの作品を「イメージとして流通する彫刻作品」であり、雑誌や作品集、映画のような媒体で流通した1960年代後半以降のランド・アートと関係深いものであるととらえている。

《Equilibres》には、同じ立体物を撮影した複数の作品があり、永田はこれらをもとに見た目がまったく同じなのにもかかわらず、タイトルの異なる複数の作品を制作している。作品のコピー(写真)を作品化した《Equilibres》をもとに、作品を制作する過程で、実物とイメージ、コピーとオリジナルの関係はより複雑となっている。

 また、永田は食文化や調理技術についてリサーチをしながら、それを実際に実践する「料理人」としての側面も持ち、それは自身の作品とも密接に関係している。最新の映像作品《Purée》は、道具と「摂食」する身体の機能の変化を、文化と身体の関係として提示しており、本展ではその実感を共有すべく、会期中に摂食の機会を設ける。コロナ禍における試みとして、2人を最小単位に各々が席を離し、孤立した状態で料理を提供する異例の「晩餐」になるだろう。元映画館での個展と合わせ、永田の活動を俯瞰できる好機となる。