EXHIBITIONS

今津景「Mapping the Land / Body / Stories of its Past」

2021.10.02 - 11.07

今津景 Memories of the Land / Body 2020 ©︎ Kei Imazu

今津景 RIB 2021 ©︎ Kei Imazu

今津景 バンドゥンのスタジオ風景 2021

 ANOMALYでは、今津景(いまづ・けい)の個展「Mapping the Land / Body / Stories of its Past」を開催する。重層的なレイヤーを持った鮮烈な作品で世界的に注目を集める今津の、3年ぶりとなる帰国展。

 今津は1980年山口県生まれ。現在はインドネシアのバンドゥンに在住。多摩美術大学大学院を修了し、2009年に「VOCA 2009」で佳作賞受賞。17年、ミネアポリス美術館に4メートルを越える大きな作品が収蔵され、20年には現代における絵画表現を後押しするフランスの「Prix Jean François Prat」のファイナリストに選出されるなど、国内外で注目を浴びている。

 絵画における身体性と現代の視覚表現との関係を探求する今津の絵画作品は、様々なメディアから画像を採取することから始まり、コンピュータ・アプリケーションでの再構成、その後、油彩でキャンバスに落とし込むという手法で制作される。いずれの作品も、作家自身の日常生活のなかで沸き起こった強い感情や私的なできごとがモチーフに託されているが、テクニックとテーマのあいだを注意深く往来することで、客観性を帯びた絵画として描き出されている。

 本展は、現在インドネシアを拠点とする自身の知見や経験をもとに、若桑みどりの『女性画家列伝』、エリザベス・グロスの『カオス・領土・芸術—ドゥルーズと大地のフレーミング』や倉沢愛子の『増補 女が学者になるとき:インドネシア研究奮闘記』など、主に土着文化と異文化、女性作家の文献から着想を得ている。

 新作《Memories of the Land / Body》では、かねてより用いるPhotoshopだけでなく、3DレンダリングソフトのDimensionを使い、三次元画像で物体表面に様々な効果を施す「テクスチャーマッピング」や「バンプマッピング」などを多用。収集した画像データを奇妙な「奥行き」または「平坦さ」をもって構成した今作は、旧来の絵画の写実的なパースペクティブとは少し違う、現代の人工的な演算空間を想起させる。

 画中にも登場するモチーフは、水のサーキュレーションをメタファーとしたエコシステムから着想を得て、鉄製のモビールや壁紙と姿を変え反復を繰り返しながら、インスタレーションとして展開される。