EXHIBITIONS

映像の美術館 #02 永田康祐「Eating Body」

2021.09.24 - 10.10

メインビジュアル

永田康祐 Puree 2020

永田康祐 Translation Zone 2019

当日のコースの一例(画像はイメージ、スープや前菜、デザートを加えた計7皿を予定)。左から「ヴィーガンフォアグラと無花果のもなか」「人参とマンゴーのサラダ」「鰹のたたきと焼茄子のピュレ、グレープフルーツのヴィネグレット」「スペアリブのロースト」

 元映画館ではシリーズ企画「映像の美術館」の第2弾として、アーティスト・永田康祐の個展「イーティング・ボディ」を開催中。10月10日まで。

 永田は1990年愛知県生まれ。社会制度やメディア技術、知覚システムといった人間が物事を認識する基礎となっている要素に着目し、あるものをほかのものから区別するプロセスに伴う曖昧さについて扱った作品を制作している。主な展覧会に、個展「約束の凝集 vol.2 永田康祐『イート』(gallery αM、東京、2020)、「あいちトリエンナーレ2019:情の時代」(愛知県美術館、2019)、『第10回恵比寿映像祭:インヴィジブル』(東京都写真美術館、2018)など。主なテキストとして「Photoshop以降の写真作品:『写真装置』のソフトウェアについて」(『インスタグラムと現代視覚文化論』所収、2018)などがある。

 永田はこれまで、デジタル写真やインタラクティブな映像作品、オーディオガイドを用いたインスタレーションなど、様々な形態の作品を手がけてきたが、近年ではとくに食文化や調理技術についてのリサーチをベースにした映像作品を発表している。これらの作品では、食文化とそれをめぐるイデオロギーの問題、食べることにまつわるテクノロジーの問題や、身体とのかかわりといった内容について、アーティスト自身が料理をする映像とともに語られる。「複数の文化の混ざり合いで生まれた料理はまがいものなのか?」「食べる行為を個人で完結することは可能なのか?」といった食べることをめぐる永田の思索は、アイデンティティや主体性の問題ともつながっている。

 本展では、永田の近作《Translation Zone》(2019)と《Purée》(2020)の2作品の上映に加え、《Purée》のなかでつくられている料理をもとに、作家自身が調理したコース料理を提供。約7皿からなるコース料理には、キャプションとしての説明書きが付け加えられており、調理法やカトラリーの種類を変えながら、鑑賞者と料理の関係が次々に切り替わる映像作品のような体験ができる(上映+ディナーチケットは完売)。

 また本展と並行して、ANOMALYで永田の新作個展「Equilibres」(10月2日〜11月7日)が同時期に開催。永田の作品を概観できる2つの展覧会を鑑賞してほしい。