EXHIBITIONS

内藤礼「breath」

2021.09.18 - 11.07
 MtK Contemporary Artでは、アーティスト・内藤礼の個展「breath」を開催。本展は、紙とアクリル絵具による絵画「color beginning」の新作で構成される。

 描くことへの探求は、内藤にとって、それまで空間と作品のイメージを掴むためであった平面作品が独立した絵画となった「namenlos / Licht」(1993~)において、「存在」と「光」を紙上で等価にとらえることから始まった。2005年に「光」「色彩」、そして「アニマ(生気)」を求めて試作が始まった絵画群は、色彩の新たな取組みであった「無題」(2006~)に続き、「color beginning」(2013~)の名のもとに発表されることになる。

 内藤の近年の絵画作品では、生気の顕われである色彩はきわめて朧気で重層的に、作品が受けとめる光や鑑賞者の心とともに移ろい続けるものとなっている。いっぽう、本展につながる紙を支持体とした「color beginning」は、2020年に制作が始まり、絵具を置いた時の「色彩=生」が現出した瞬間の作家自身の純粋な驚きと喜びを契機に、その経験が根本に置かれている。このように約30年にわたって、絵画は内藤が希求する人間の初動、古来よりなされてきた無名の行為に連なる存在であり続けている。

 本展を構成する「color beginning」は、心身のゆっくりとした呼吸のような感覚を求めた作家が、いまここにしかない時間の連続である一日一日のつながりを感じながら、新たに取り組んだ連作だ。並びあう作品のあいだには、人間(作家)が「生きていること」が、その「時間」とともに生き生きと写し出されている。