EXHIBITIONS

金氏徹平「S.F.(Smoke and Fog)」

金氏徹平 Model of Something #7 2021

金氏徹平 Games, Dance and the Constructions(Acrylic)#1 2021

金氏徹平 Ghost Building(Six panel screen)#1 2021

 京都を拠点に活動するアーティスト・金氏徹平の個展「S.F.(Smoke and Fog)」がアートフロントギャラリーで開催される。

 金氏は1978年京都府生まれ。2003年に京都市立芸術大学大学院彫刻専攻を修了。これまで、プラスチック製品やフィギア、雑誌やマンガの切り抜きなど、身の回りの事物を素材に、部分を切り抜きつなぎ合わせることで、既存の文脈を読み替えるコラージュ的手法を用いて作品を制作してきた。その表現形態は彫刻、絵画、映像、写真など多岐にわたり、一貫して物質とイメージの関係を顕在化する造形システムの考案を探求している。

 近年では舞台にも積極的に関わり、『tower-(THEATER)』(KYOTO EXPERIMENT、2017/Bankart、2017/六本木アートナイト、2018)では、自身の映像作品を舞台化・演出を手がけた。またセノグラフィー(舞台美術)として演劇ユニット チェルフィッチュとともに発表した作品、劇場版『消しゴム山』(KYOTO EXPERIMENT、2019)・美術館版『消しゴム森』(金沢21世紀美術館、2020)・配信版『消しゴム山は見ている』(2020)では、同一テーマの作品を鑑賞形式を変えて発表するなど、表現の領域をますます拡張している。

 本展は、今年金氏が参加する「奥能登国際芸術祭2020+」(石川県珠洲市、〜10月24日)と連動して開催される。

 日本海に突き出る能登半島の最先端に位置する珠洲市を視察するなかで金氏が注目したのは、海からいくつもの違う方向の遠くを想像できる環境であることと、町中に巨大なキリコ倉庫(伝統的な祭りのための燈籠であるキリコを収納する倉庫)が多く点在していること。珠洲との出会いは、「いま、ここで、いま、ここではない場所や状態を想像させるこの地で、それらがすぐ隣に存在し続けていることを感じながら生きていく」ということについて、思考を巡らせるきっかけになったと言う。

 2次元と3次元、内と外、嘘と本当、常時と非常時といった、対極だが明確なかたちや境界線はないようなことが混ざり合いひとつの状況や構造をつくることを想像し造形のチャンスとしてきた金氏が、「奥能登国際芸術祭2020+」で珠洲の町を巡って感じた事物を軸に表現する。

 そしてアートフロントギャラリーではそのコンセプトと共通した、都市のなかのキリコ倉庫のような作品を展開。最新作とともに2013〜14年にシンガポールの版画工房STPIで制作した作品群(日本初公開)からも、キリコ倉庫的な作品が展示され、これまでの金氏作品の一貫性がより感じられる展覧会となる。