EXHIBITIONS

青木野枝「Mesocyclone」

2021.04.17 - 06.05

ANOMALYのためのプランドローイング 2021 © Noe Aoki

「Mesocyclone」(ANOMALY、東京、2021)展示風景 撮影=山本糾 © Noe Aoki Courtesy of ANOMALY

「Mesocyclone」(ANOMALY、東京、2021)展示風景 撮影=山本糾 © Noe Aoki Courtesy of ANOMALY

 鉄を素材に大規模な彫刻作品などを手がける美術家・青木野枝。2019年の3館(霧島アートの森、長崎県美術館、府中市美術館)における個展を終え、ANOMALYでの個展は今回が初開催となる。

 青木は1958年東京都生まれ。武蔵野美術大学大学院修了。80年代の活動当初から地球に水よりも多く存在し、古来人類の近くにあった鉄という素材に魅了され、工業用の鉄板をパーツに溶断し、溶接して組み上げるシンプルな作業をひたすら繰り返すことで完成する作品を制作してきた。青木の手が関わることでそれらは素材本来の硬質感や重量感、さらには「彫刻=塊」という概念からも解放され、作品の置かれた空間を劇的に変化させる。

 展示空間や作品の置かれる場を注意深く観察し、可視、不可視に関わらず広くそこに存在するもの、そして見るものさえをも作品の一部として取り込み、インスタレーションとも一線を画した独自の世界を構築してきた青木は、2019年の巡回展においては、作品をたんに異なる美術館に巡回させるのではなく、それぞれの空間に取り組み、制作した新作を展示することにこだわりその大業を成し遂げた。
 
 大型の屋内外公共彫刻や美術館での個展開催経験が多数あり、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ、瀬戸内芸術祭、あいちトリエンナーレなどの芸術祭に参加し、芸術選奨文部科学大臣賞や毎日芸術賞、中原悌二郎賞受賞など数多くの受賞歴があることは知られる青木だが、20年にわたって子供たちと一緒に鉄を切るワークショップも各地で積極的に開催している。

 本展では、サイトスペシフィックに制作された鉄による大型の新作やドローイング、版画を展示。空間を大胆に変容させる巨大な鉄の最新作《Mesocyclone》は展覧会終了と同時に解体され、2次元のモニターや写真からは伝わることのない一期一会の作品だ。いまの青木の実践を知る好機となる。