EXHIBITIONS

「網膜反転侵犯」小松浩子 立川清志楼

2021.02.04 - 02.21

小松浩子、立川清志楼「網膜反転侵犯」(MEM、東京、2021) での展示風景 Courtesy of he artists and MEM

小松浩子 The Piece, from 内方浸透現象 © Hiroko Komatsu Courtesy of he artist and MEM

小松浩子 The Piece, from 内方浸透現象 © Hiroko Komatsu Courtesy of he artist and MEM

立川清志楼 第一次三カ年計画 Selection Remix © Kiyoshiro Tatekawa Courtesy of the artist and MEM

小松浩子、立川清志楼「網膜反転侵犯」(MEM、東京、2021) での展示風景 Courtesy of he artists and MEM

 小松浩子と立川清志楼による2人展「網膜反転侵犯」がMEMで開催される。

 小松は一貫して、工業地帯や工事現場の資材や廃材を撮影し、大量の写真プリントで空間を構成するインスタレーションで知られている。制作においてまず、展示空間のサイズから印画紙のサイズと量を割り出し、空間に見合う量の写真プリントを生産。それらを空間に配置して8ミリカメラで撮影し、加えてその映像を床に投影する、またモニターで上映する。小松の作品はこうした、同じ時空間内にスチル写真と動画を多重化させる手法が特徴だ。2010年には一年限定で自主ギャラリーを運営。毎月1回、2週間の新作展を10回連続で開催した。

 立川は「物質地帯」と題された、「非物語で物質性の高い触覚的映像作品を制作している作家」による実験映画の上映会を定期的に開催。小松も含めた国内外の映像作家を紹介しているとともに、自身の作品の上映会を2020年7月から毎月連続で開催している。「作品の生産に次ぐ生産こそが作家生命の根源であり作品の生産停止は作家の消失を意味する」。このように語る立川は、毎月5本の新作の映像作品を発表している。

 制作活動の長期計画性や非物語で物質性の高い映像作品という点が、両者の作品をゆるやかにつなげているように見えるが、それぞれの作品が持つ資質は異なる。

 小松の作品では物質の量や質量が重要な要素になっており、同時にそれらのおびただしい物質が、プリントや映画など複数の媒体を通過する過程で均質化、抽象化するダイナミズムを持つ。いっぽう立川の作品は、動物園などある現場でのカメラ据え置きのワンシーンワンショットの作品が多く、一定時間内にとらえられた微細な風景の変化を主眼としている。

 本展では、2人が制作した映像インスタレーションを展示。「網膜反転侵犯」という題名のもと、互いの領域を侵犯し合いながらひとつの空間を共同でつくり上げる。

 なお本企画は、「第13回恵比寿映像祭」(東京都写真美術館主催、2月5日〜21日)の地域連携プログラムの一環として開催される。